老犬の夜泣き(夜鳴き)は、飼い主さんを悩ます行動のひとつですが、それには認知症をはじめさまざまな要因が関係しています。そこで今回は、老犬の夜泣きの原因と対処法、防音対策、予防法を解説。飼い主さんに聞いた犬の夜泣きの体験談もご紹介します。
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老犬が夜泣き(夜鳴き)する原因とは?
老犬が夜泣きをする理由はひとつではありません。正しく対処してあげるためにも、まずはその原因を知っておきましょう。
認知症
認知症は加齢による脳の変化などが原因で、さまざまな症状があらわれる病気です。犬は11~15才頃(早い場合は7~8才頃)から、夜泣きや徘徊、昼夜逆転といった認知症の症状が出やすくなるといわれています。
犬の認知症について詳しく知りたいかたは、以下の記事を参考にしてみてください。
病気などによる体の痛み
犬は加齢に伴い、慢性的な痛みを伴う変形性関節症や、血行不良による床ずれなどを患いやすくなります。こういった体の痛みが原因で、犬は夜泣きをすることがあります。
不安な気持ち
高齢になり視力や聴力が衰えると、今までのようにものごとが把握できなくなるため、犬は不安な気持ちを感じやすくなります。とくに夜間は周囲が見えにくく、音も聞き取りづらくなるため、不安な気持ちが増して夜泣きをすることがあるようです。
要求
空腹やのどの渇き、トイレ、寝床の不快感などを訴えて、夜泣きをするケースもあります。老犬の要求鳴きは単なるワガママや甘えだけでなく、犬自身で行うことができないために飼い主さんのサポートを求めている場合があり、若い犬の要求鳴きとは事情が異なることを知っておきましょう。
原因別に見る 老犬の夜泣き(夜鳴き)の対処法
では考えられる夜泣きの原因別に、飼い主さんが取るべき対処法を見ていきましょう。
認知症による夜泣き(夜鳴き)
愛犬に認知症が疑われる症状が見られた場合、まずは動物病院を受診しましょう。
認知症になると昼夜逆転生活になりやすく、夜なのに昼間と勘違いして夜泣きをする傾向が見受けられます。この場合、体内時計を調整することが夜泣きの軽減に効果的ですので、無理のない範囲で散歩をさせるなど、日中は太陽の光を浴びながら起きて過ごせる工夫をしましょう。
サプリメントで症状が改善する場合も
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などにより、認知症の症状が改善したケースも報告されています。かかりつけの獣医師と相談しながら、これらの成分が入ったサプリメントやフードを与えてみるのもひとつの手です。
体の痛みによる夜泣き(夜鳴き)
体の痛みが夜泣きの原因として疑われる場合、まずは動物病院できちんと治療を受けることが大切です。また、痛み止めの薬などにより夜泣きがおさまるケースもあるので、獣医師に相談してみるとよいでしょう。
不安な気持ちによる夜泣き(夜鳴き)
不安な気持ちからくる夜泣きの場合は、愛犬を安心させてあげることがポイントです。やさしく声をかけるなど、飼い主さんがそばにいることを伝えてあげましょう。また、日中は飼い主さんの気配が伝わるような場所に愛犬の居場所を用意するほか、夜は飼い主さんと同じ部屋で寝かせてあげるようにすると、愛犬の不安も軽減されるでしょう。
要求による夜泣き(夜鳴き)
愛犬が自力でできないことのサポートを求めて鳴いている場合は、愛犬の状態をよく観察して何を求めているのか予想し、可能な範囲で応えてあげましょう。ただし、飼い主さんが疲労で倒れてしまわないよう、ご自身の健康にも十分配慮することが大切です。
老犬の夜泣き(夜鳴き)の対処時の注意点とは?
老犬の夜泣きの対処時には、以下の点に注意するようにしてください。
薬剤の使用は獣医師に相談を
飼い主さんができるさまざまな努力をしても夜泣きがおさまらない場合は、獣医師と相談して睡眠薬や安定剤を使用する方法もあります。愛犬と飼い主さん双方がゆっくり体を休めるためにも、選択肢のひとつとして検討してみてよいかもしれません。
飼い主さんの介護疲れにも気を付けて
愛犬の夜泣きが連日続くと、介護する飼い主さんも精神的・肉体的に参ってしまいます。デイケアを利用するなど、飼い主さんの休息も大切にしてください。
夜泣き(夜鳴き)の防音対策グッズやご近所への配慮について
老犬の夜泣きは、ご近所迷惑になることもあります。ここでは、自分でできる防音対策や、ご近所のかたへの説明についてご紹介します。
防音グッズを利用する
防音対策グッズとして、取り外しができる防音壁(シート)や防音カーテン、吸音材などが市販されています。外部に鳴き声が響くのを少しでも軽減するために、こうしたグッズを活用するのも手です。
ご近所迷惑にならないために
挨拶をしておくだけでも印象は変わってきますので、可能であれば、ご近所のかたに愛犬の夜泣きについて説明とおわびをしておくことをおすすめします。個別に訪ねることが難しい場合は、自治会や町内会に相談してもよいでしょう。
老犬の夜泣き(夜鳴き)の予防法は?
犬の老化は止めることができませんが、日々のお世話の工夫によって、そのスピードを遅くすることは可能です。日常生活の中で、遊びなどを通して脳トレーニングを行ったり、適度な運動をして足腰の健康を維持したりすることで、認知症や寝たきり、夜鳴きを防ぐ工夫をしましょう。
脳トレーニングや健康寿命を延ばす運動法、生活習慣などについては以下の記事を参考にしてみてくださいね。
飼い主さんに聞いた 犬の夜泣き(夜鳴き)に関するアンケート
最後に、飼い主さんに聞いた犬の夜泣きに関するアンケート(※)結果をご紹介します。老犬の飼い主さんから寄せられた体験談もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
※2021年7月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数172人)
夜泣き(夜鳴き)を体験したことがありますか?
約半数の飼い主さんが、愛犬の夜泣きを経験したことがあるという結果になりました。
何才から夜泣き(夜鳴き)が始まりましたか?
シニア世代では15才から夜泣きが始まったというケースがもっとも多く、13才、14才があとに続く結果となりました。
夜泣き(夜鳴き)の頻度はどれくらいですか?
夜泣きは「毎日」というケースが約4割と、その頻度の高さがうかがえる結果となりました。
1回の夜泣き(夜鳴き)は、どれくらいの時間続きますか?
夜泣きが続く時間は「日によって異なる」というケースがもっとも多いようです。
夜泣き(夜鳴き)するときの愛犬の様子を教えてください
今回の結果では、「ワンワン」と鳴くタイプがもっとも多いようです。また、「その他」の意見としては、「ヒューン」や「アウッ」、「ウーウワン!」などの声も寄せられました。
夜泣き(夜鳴き)の対処法を教えてください
今回の結果では、「そばに行ってなだめる」という飼い主さんが多いようです。また、「その他」として、以下のような声が寄せられました。
夜泣き(夜泣き)の対処法
- 「だきしめる」(10才)
- 「ちょっと外に連れていく」(10才)
- 「少し離れた所から声をかける」(12才)
- 「車が好きで、鳴きはじめると夜中でも車に乗せて落ちくまで走っていた」(14才)
- 「トイレに連れていく」(14才)
- 「水を飲ませる」(14才)
- 「オムツをみて、お水を飲ませて、抱っこしてトントンしてみる」(15才)
- 「肉球をマッサージしてあげる」(15才)
- 「昼間は抱っこ散歩でいろいろなニオイを嗅がせたり、歩行器に乗せたりして、なるべく起きている時間を長くしてお昼寝ばかりにならないようにした。夜鳴きのときは、抱っこしてなでたり、別のベッドに寝かせてみたり、トイレやお水などしたいことや欲しいものがないか試して介助した」(15才)
- 「認知症の夜泣きではなかったので、吠えるのは意思表示であることがほとんどなので、オムツが汚れていないか確認したり、体勢を変えたり、窓を開けて外の空気を吸わせたりしていた。それでもダメなときは抱っこしたまま自分は座って寝ていた」(17才)
さまざまな背景がある老犬の夜泣き。原因と対策を知って、愛犬も飼い主さんもしっかり体を休めるように工夫してみましょう。
参考/「いぬのきもち」2017年6月号『愛犬と過ごす「これから」を考えよう すこやかなシニア犬になるための20のことば』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/terasato
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。