犬と暮らす
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犬がマウンティングをする本当の意味|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.116
犬のマウンティングは、強さを示すために、強い方が上に乗ると思っている飼い主さんが多いのではないでしょうか? 実はそうとは限らないようです。マウンティングの意味とは……?(編集部)
最近よく耳にする言い回しです。
格闘技で相手の上に乗るのをマウントポジションといって、上に乗っている方が圧倒的に有利とされている。
そこからなのでしょう、クラスメートとか、ママ友同志とか、知識とか身につけているものとかをひけらかし、狭いコミュニティの中で自分の方が相手よりも優位に立とうする人を、マウントを取る人、マウントを取りたがる人などという。
マウントを取る話を入り口にしたということは、もうおわかりかと。
今回のテーマは、マウンティング。
それも性行動以外の、それに関して。
さて犬の性行動でないマウンティング、弱い相手に対し自らの強さを誇示するための行為などと昔からいわれていますが、はたしてそれは真実なのでしょうか?
強さを誇示する行為ではない
序列は作らないが、1対1の関係においては、食べ物とか快適な場所とか子作りの権利とか限られた資源(リソースという)に対してどちらが譲るべきかを、大まかに決めているという話もしました。
強さを主張し合うことは、闘争へと発展しやがてケガを負い、感染症から死に至る、そうしたリスクが高い。すなわちお互いに強さを主張することに明け暮れている生物は、遺伝子を残しにくく淘汰されてしまう。
ゆえに「譲る」ことが重要となる。
そしてどちらが譲るべき立場なのかを確認する行為のひとつが、マウンティングということなのです。
強さをアピールするのではなく、どちらが譲るべき立場なのかを決めている。そしてそれを決めるのは、マウンティングしている方ではなく、されている方。
私のパートナーの1頭、鉄(本名:鉄三郎)の成長過程はまさにその通りでした。
鉄は成長過程において、出会う犬出会う犬、すべてとは言いませんがそこそこさまざまな犬にマウンティングをしようとしたのです。
みんなに拒絶され誰にも仕掛けなくなる
一方で、鉄もマウンティングを仕掛けられます。
こちらはすべての犬ではないけれど、多くを鉄は受け入れてしまう。
結果鉄は、自らは譲られる立場ではないことを自覚していったようです。
自らの強さを誇示するために行う行為ではなく、相手は自分にリソースを譲るかどうかの確認行為。強い弱いという表現を使うとしても、自らの強さを誇示するために行う行為ではなく、自分は相手よりも強い?と確認している行為。
だからこそともいえるのですが、オスのみ見せる行為ではく、メスがオスに見せることもある。
いずれにしても、そのそれぞれの立場を決めるのは、された方がそれを受け入れるかということです。
人に対するマウンティングは拒絶するように
もうお分かりと思いますが、されるがままにさせてはいけません。
それを受け入れることは、自らがその犬に対して「こと」や「もの」を譲る立場であることを伝えていることになる。譲らなくてもいい立場に犬をさせてしまうからです。
都度首輪をつかんで引き離し、されるがままにさせないこと。叱る必要はありません。ただ引き離す(拒絶する)だけ。
毎回引き離していれば、犬はその相手にはマウンティングを取らなくなります。
鉄がそうであったように、です。
もっとも鉄は人に対するマウンティングはやりませんでした。というか保護犬出身ゆえからでしょう、人には警戒する傾向が強かったのです。
私に対するマウンティングはもう1頭のダップがしつこかった。その都度、首輪をつかんで引き離す、またはマウンティングをしそうになってもさせない、そうした対応を続けるうちに、いつしか私に対するマウンティングは行わなくなりました。
まあかように犬が人に仕掛けてくるマウンティングへの対応は簡単なのですが、狭いコミュニティ内の人たちにマウントを取りたがる人への対応は、どうしたらいいものか。
はてさて、どなたかいい答えをお持ちだったりしません?
西川文二氏 プロフィール
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