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犬がマウンティングをする本当の意味|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.116

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
犬のマウンティングは、強さを示すために、強い方が上に乗ると思っている飼い主さんが多いのではないでしょうか? 実はそうとは限らないようです。マウンティングの意味とは……?(編集部)

マウントを取る人、マウントを取りたがる人。
最近よく耳にする言い回しです。
格闘技で相手の上に乗るのをマウントポジションといって、上に乗っている方が圧倒的に有利とされている。
そこからなのでしょう、クラスメートとか、ママ友同志とか、知識とか身につけているものとかをひけらかし、狭いコミュニティの中で自分の方が相手よりも優位に立とうする人を、マウントを取る人、マウントを取りたがる人などという。
マウントを取る話を入り口にしたということは、もうおわかりかと。
今回のテーマは、マウンティング
それも性行動以外の、それに関して。
さて犬の性行動でないマウンティング、弱い相手に対し自らの強さを誇示するための行為などと昔からいわれていますが、はたしてそれは真実なのでしょうか?

強さを誇示する行為ではない

犬は序列をつけるわけではない、という話を当コラムVol.23で行いました。
序列は作らないが、1対1の関係においては、食べ物とか快適な場所とか子作りの権利とか限られた資源(リソースという)に対してどちらが譲るべきかを、大まかに決めているという話もしました。
強さを主張し合うことは、闘争へと発展しやがてケガを負い、感染症から死に至る、そうしたリスクが高い。すなわちお互いに強さを主張することに明け暮れている生物は、遺伝子を残しにくく淘汰されてしまう。
ゆえに「譲る」ことが重要となる。
そしてどちらが譲るべき立場なのかを確認する行為のひとつが、マウンティングということなのです。
強さをアピールするのではなく、どちらが譲るべき立場なのかを決めている。そしてそれを決めるのは、マウンティングしている方ではなく、されている方。

私のパートナーの1頭、鉄(本名:鉄三郎)の成長過程はまさにその通りでした。
鉄は成長過程において、出会う犬出会う犬、すべてとは言いませんがそこそこさまざまな犬にマウンティングをしようとしたのです。

みんなに拒絶され誰にも仕掛けなくなる

ところがマウンティングする相手、する相手から拒絶される。
一方で、鉄もマウンティングを仕掛けられます。
こちらはすべての犬ではないけれど、多くを鉄は受け入れてしまう。

結果鉄は、自らは譲られる立場ではないことを自覚していったようです。
自らの強さを誇示するために行う行為ではなく、相手は自分にリソースを譲るかどうかの確認行為。強い弱いという表現を使うとしても、自らの強さを誇示するために行う行為ではなく、自分は相手よりも強い?と確認している行為。
だからこそともいえるのですが、オスのみ見せる行為ではく、メスがオスに見せることもある。
いずれにしても、そのそれぞれの立場を決めるのは、された方がそれを受け入れるかということです。
成長期は自分の何倍も大きい相手にも乗ろうとしていた鉄。結果ことごとく拒絶され、やがて乗らなくなった
Can! Do! Pet Dog School

人に対するマウンティングは拒絶するように

飼い主のみならず出会う人間に対してマウンティングをしようとする犬がいます。
もうお分かりと思いますが、されるがままにさせてはいけません。

それを受け入れることは、自らがその犬に対して「こと」や「もの」を譲る立場であることを伝えていることになる。譲らなくてもいい立場に犬をさせてしまうからです。

都度首輪をつかんで引き離し、されるがままにさせないこと。叱る必要はありません。ただ引き離す(拒絶する)だけ。
毎回引き離していれば、犬はその相手にはマウンティングを取らなくなります。
鉄がそうであったように、です。

もっとも鉄は人に対するマウンティングはやりませんでした。というか保護犬出身ゆえからでしょう、人には警戒する傾向が強かったのです。
私に対するマウンティングはもう1頭のダップがしつこかった。その都度、首輪をつかんで引き離す、またはマウンティングをしそうになってもさせない、そうした対応を続けるうちに、いつしか私に対するマウンティングは行わなくなりました。

まあかように犬が人に仕掛けてくるマウンティングへの対応は簡単なのですが、狭いコミュニティ内の人たちにマウントを取りたがる人への対応は、どうしたらいいものか。
はてさて、どなたかいい答えをお持ちだったりしません?
人に仕掛けてきたときには、させないこと。犬はできないことはやらなくなりますので
Can! Do! Pet Dog School
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。
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