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【獣医師監修】犬の口臭 ニオイ別の原因と歯磨きの仕方
愛犬の口臭の原因は、もしかしたら「病気」かもしれません。そこで今回は、犬の口臭の特徴別に、その原因として考えられる病気をご紹介します。口臭予防につながる口腔内チェック法や、歯磨き法もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
犬の口臭は病気が原因かも?

犬の口からいつもと違うニオイがする場合、口腔内の病気にとどまらず、体全体に病気が潜んでいるおそれもあります。なかには重篤な病気になっているケースもあるので、注意が必要です。
ただ、いつも愛犬と一緒にいる飼い主さんは、ニオイに慣れてしまって異変に気づかないことも。ニオイをチェックする場合は、友人や知人などほかの人に意見を聞いてみると参考になります。
では、犬の口臭の特徴別に、原因として疑われる病気を見ていきましょう。
犬の口臭の原因①生ゴミのようなニオイがする場合

口内炎:口の中の粘膜にできる炎症や潰瘍が口臭のもとに
栄養不足や細菌感染、歯周病などが原因で口の中の粘膜に炎症が起こる病気です。口臭のほか、大量のよだれが出て、微熱を伴うことも。治療は口の中を清潔にし、痛み止めや抗生物質、ビタミン剤などを投与します。歯周病が原因であることも考えられるので、その場合は歯周病の治療を行います。
歯周病:細菌が原因で歯肉に炎症が起きて悪臭に
口臭のほか、歯ぐきに腫れや出血が見られます。歯周病の治療は、犬に全身麻酔をして歯石を除去するのが一般的ですが、症状がひどい場合は抜歯することも。歯石除去後は抗生物質などを投与して、細菌の繁殖を防ぎます。
舌炎(ぜつえん):切り傷などによる炎症で生ゴミのようなニオイに
口の中にできた傷や歯周病などが原因で、舌に炎症が起こります。口臭や大量のよだれのほか、舌の表面が白くただれることも。消毒薬や抗菌剤などを投与して治療を行い、治療中は舌を刺激しないように、やわらかい食事を与えます。
犬の口臭の原因②甘ったるいニオイがする場合
糖尿病:体に吸収されない糖が体外に排出されて口臭の原因に
体内のインスリンが減り、必要な糖が吸収できず尿と一緒に出てしまう病気。唾液中の糖分も多くなり、それが口臭のもとになります。糖尿病になると多飲多尿や体重減少などの症状も見られ、食事のタイミングや内容を制限するとともに、インスリンの投与などで治療します。
門脈シャント:肝臓の機能不全の一種で甘いニオイが
一部の血管が肝臓を通らず、直接心臓につながっているため、本来肝臓で解毒されるはずの毒素が体内に循環し、発育不全やけいれんなどの障害が起こる病気。予防は難しいですが、外科手術で治療できるケースもあるので、定期的な健診で早期発見、早期治療を心がけましょう。
犬の口臭の原因③生臭い・血生臭いニオイがする場合

胃がん:がんの進行度合いでニオイは異なる
口臭のほか嘔吐などの症状も。スキルス胃がんの場合はよく吐くので、胃酸混じりの酸っぱいニオイがし、さらに進行すると吐血し、血生臭いニオイがすることがあります。ニオイの症状が出たときはかなり進行していて、治療できないケースもあるので早期発見が大事です。
扁平上皮( へんぺいじょうひ)がん:潰瘍(かいよう)が出血して血生臭いニオイに
口の中のほか、耳の先端や鼻の先端、爪の根元などに発生する悪性腫瘍です。がんが進行すると潰瘍部が出血しはじめ、それとともに細菌感染も起きるので、血と膿が混じったニオイになることも。予防は難しいので早期発見が治療のカギを握ります。
犬の口臭の原因④強烈な腐敗臭がする場合
メラノーマ(悪性黒色腫):口の中に発生しやすい、独特なニオイ
犬の口の粘膜や皮膚などに発生し、早期にリンパ節や肺に転移することがある悪性腫瘍。皮膚にできた場合、ニオイはありませんが、口の中にできたときは家中が臭くなるような強烈な腐敗臭を放つ口臭と、血混じりのよだれが出るなどの症状が見られます。
犬の口臭の原因⑤オシッコのニオイがする場合
尿毒症(にょうどくしょう)…口がオシッコ臭いのは、かなり危険な状態
何らかの病気が原因で腎臓が正常に機能せず、尿から老廃物を排出できなくなると、毒素が体内にたまり、尿毒症を引き起こします。口からオシッコのニオイがしたら、深刻な状態です。命にかかわるので救急で受診して。
犬の口臭対策にもつながる口腔内チェック法
犬の口臭で気づく病気のなかでも、代表的なのが歯周病です。3才以上の犬の約80%がかかっているともいわれますので、スキンシップを兼ねて以下の項目をチェックするようにしましょう。
①口臭はないか

愛犬の口のニオイが、少し前に食べたもののニオイでなく、不快なニオイがしていたら、歯周病や口腔内腫瘍などが疑われます。
②犬歯・奥歯・前歯に歯垢や歯石、歯肉の腫れはないか


犬の歯垢・歯石は犬歯と奥歯につきやすく、歯ぐきの赤みや腫れもそこから始まることが多いよう。愛犬の唇を押し上げ、左右の歯(とくに上の歯)と前歯の歯ぐきの腫れ、汚れを確認して。
③唇の裏側が腫れていないか

愛犬の唇を押し上げて、裏側全体をチェック。ここに口内炎や口腔内腫瘍ができることがあります。腫れていたら受診して。
④前歯や奥歯の裏側に歯垢や歯石がないか、舌に腫れがないか

可能なら、口の中の奥のほうまで隅々を見ると、病気の早期発見につながります。
下記の記事では犬の虫歯チェック法が紹介されているので、気になるかたは参考にしてみてください。
犬の口臭をケアする歯磨き法
愛犬が歯のトラブルに苦しまないよう、日々のお手入れをしましょう。おすすめは、歯磨きペーストと歯ブラシを使った簡単お手入れです。歯磨きペーストは歯ぐきにたっぷりつけると夢中でなめるので、その隙にササッと磨くことができます。あまり嫌がらせずに磨けるため、歯磨きが好きになるメリットも。
歯のお手入れ方法
①歯磨きペーストを指にとり、愛犬の歯ぐきに塗る

愛犬が好きな味の歯磨きペーストを、指や歯ブラシにたっぷりととります。唇を押し上げ、歯ぐきをなでるように奥までつけましょう。
②愛犬が歯磨きペーストをなめている間に歯ブラシで磨く

愛犬が歯磨きペーストをなめ始めたら歯磨きを開始して。汚れがたまりやすい歯と歯ぐきの境目を重点的に磨きます。歯磨きペーストは磨き終わるまで何度つけ直してもOK。
なお、以下の記事では歯磨きが苦手な犬におすすめのデンタルケアグッズをご紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
犬の口臭の原因は日常のケアで取り除こう

愛犬の口からいつもと違ったニオイがする場合、口の中に木の枝、割り箸や菜箸などの異物が挟まっているというケースも。ふだんから愛犬の口臭を気にしていれば、ケガや誤食、病気に、いち早く気づけるので、毎日のチェックを怠らないようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2015年6月号『ニオイが変!でわかる犬の病気』(監修:野矢雅彦先生)
「いぬのきもち」2017年12月号「毎日かんたん!&たまにしっかり!スキンシップにもなるWチェックで健康を守ろう 年代別のチェックポイントつき」(監修:石田陽子先生)
監修/いぬのきもち相談室獣医師
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