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【獣医師監修】犬にブロッコリーを与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

健康野菜として注目されているブロッコリー。最近はより高い栄養成分を含むブロッコリースプラウトも人気です。そんなブロッコリーは、犬が食べても大丈夫な野菜ですが、甲状腺機能低下症や尿路結石症の犬に与える際には注意が必要です。ブロッコリーの栄養と与える際に気をつけたいことを紹介します。

佐野 忠士 先生

犬にブロッコリーを与えるときはグルコシノレート、マグネシウム、シュウ酸に要注意

ペットの概念のための健康食品
Kira-Yan/gettyimages
ブロッコリーは、ビタミンCやβカロテンなどのビタミン、カリウムやカルシウムなどのミネラル、食物繊維が豊富に含まれる緑黄色野菜です。それらの栄養素は、犬の健康を維持し、病気を予防するのに役立つものなので、適量であれば愛犬の食生活に取り入れても基本的には問題はありません。

ただし、ブロッコリーは小松菜やキャベツと同じアブラナ科の野菜で、甲状腺ホルモンの分泌を阻害する「ゴイトロゲン(グルコシノレート)」という成分が含まれています。そのため、甲状腺の機能が低下している犬には与えないほうが安心でしょう。また、ブロッコリーには尿路結石の原因となるマグネシウムやシュウ酸も豊富に含まれているため、尿路結石を患ったことがある犬やその心配がある犬に与える場合は注意が必要です。

ブロッコリーのおもな栄養素|ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富

目の前に差し出されたブロッコリーの小房をじっと見つめる黒いミニチュア・ピンシャー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ブロッコリーに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー37kal
水分86.2g
タンパク質5.4g
脂質0.6g
炭水化物6.6g
灰分(無機質)1.2g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がブロッコリーを食べるメリット|抗酸化作用で病気の予防と健康維持、アンチエイジング

ブロッコリーのぬいぐるみにかじりついているシー・ズー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ブロッコリーに含まれる栄養成分のなかから、とくに愛犬の健康維持に役立つと考えられるものを紹介します。

ビタミン|病気の予防、アンチエイジング、貧血予防

ブロッコリーには、ビタミンC、βカロテン、葉酸、ビタミンKなどが含まれています。

ビタミンC

ビタミンCは、タンパク質からコラーゲンを生成するのを助け、毛細血管や歯、骨を健康に保つ栄養素で、鉄分の吸収促進や解毒やホルモン代謝にも役立ちます。また、病気や老化の原因となる活性酸素を除去する強い抗酸化作用も期待できるので、愛犬の健康維持と病気の予防が期待できます。

βカロテン

βカロテンは犬の体内でビタミンAに変換され、おもに視力、皮膚、被毛を健康維持や、丈夫な粘膜や歯の生成に役立ちます。さらにビタミンC同様、強い抗酸化作用によって病気予防やアンチエイジングが期待されます。

葉酸

葉酸はビタミンB群のひとつで、DNAの合成に関わっています。胎児がお腹にいる母犬や、成長期の犬にはとくに必要だと考えられます。また、葉酸の欠乏は、貧血や口内炎の原因になります。

ミネラル|体のさまざまな機能を正常に保ち、健康を維持

ブロッコリーにはカリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄などさまざまなミネラルを含んでいます。ミネラルは、お互いが助け合って骨格構造や体液のバランスの制御、神経伝達、筋肉の収縮などに役立つため、それぞれを過不足なく摂取することが大切です。そうしたことからブロッコリーは優れた食べ物といえるでしょう。

カリウム

カリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があり、体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、高血圧を防ぐ役割を担っています。また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていて、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつです。

カルシウム、リン

カルシウムとリンは、骨や歯の主要な成分であるほか、血液や体液の中で常にバランスを保ちながら、さまざまな機能を担います。この2つのうちカルシウムが少なくなると、骨の骨密度が下がってしまうのですが、ブロッコリーには双方がバランスよく含まれています。

食物繊維|豊富な不溶性食物繊維で快便をキープ

食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維は、腸の中で糖質の吸収をゆるやかにし、食後の血糖値の上昇を穏やかにしたり、コレステロールを体外に出したりする働きがあります。一方、不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増して腸のぜん動運動を促すことで、スムーズな排便を助けます。

ブロッコリーには、この両者が豊富に含まれていますが、とくに不溶性食物繊維が水溶性食物繊維の約4倍あるので、便秘の解消とスムーズな排便習慣が期待できるでしょう。

グルコシノレート|殺菌作用や抗酸化作用に期待

ブロッコリー、キャベツ、大根などのアブラナ科の植物に含まれる「グルコシノレート」。この成分は、体内の細胞内にある酵素と混じり合うことで辛味成分の「イソチオシアネート」に変換されます。
「イソチオシアネート」には、抗菌・殺菌作用や血液をサラサラにする作用があります。人では、がんの予防効果も期待されていますが、犬にも同様の予防効果があるかは、今のところ実証されていません。

スルフォラファン|ブロッコリースプラウトにより多く含有。解毒や抗酸化作用に期待

スルフォラファンは、「イソチオシアネート」の一種で、強い抗酸化作用で体内に増え過ぎた活性酸素からのダメージを防ぎ、新陳代謝を活性化。解毒作用を高める働きもあると考えられています。

さらに、近年とくに注目されているのが、発ガン物質を解毒する酵素の働きを高める作用です。とくに、ブロッコリーの新芽である「ブロッコリースプラウト」により多くのスルフォラファンが含まれているため、身近なスーパーなどでもよくブロッコリースプラウトを目にするようになりました。
ただし、これらの効果が犬にも期待できるかどうかの実証は、今のところ報告されていません。

犬がブロッコリーを食べるデメリット|過剰摂取はNG 。腎臓病、結石症のある犬は要注意

レモン色のベストを着て横向きに座り、右斜め上方向のカメラを見つめて微笑むチワワ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
体によい栄養成分が多いブロッコリーですが、どんなによい成分であっても過剰に摂取すればマイナスに働くことがあります。犬にブロッコリーを与えるデメリットを紹介します。

食物繊維|過剰な摂取は便秘の原因にも

愛犬の腸内環境を正常化し、快便を維持するには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスを保つことが大事です。
ブロッコリーには、不溶性食物繊維のほうが水溶性の約4倍含まれているので、過剰に摂取すると腸の中で便が大きくなり過ぎたり、固くなり過ぎたりして、かえって排便が困難になる場合があります。

グルコシノレート|甲状腺ホルモン分泌を妨げる

「アブラナ科」の植物に含まれる「グルコシノレート」には、甲状腺ホルモンの分泌を阻害する働きがあります。そのため、大量にブロッコリーを食べると、甲状腺ホルモンの分泌を低下させて、運動性の低下や無気力などの症状を引き起こしかねません。毎日、多量のブロッコリーを与え続けなければ、それほど心配はないと考えられていますが、すでに甲状腺機能の低下が認められる犬には与えないほうが安心でしょう。

また、「グルコシノレート」はすりおろしたり噛み砕いたりして細胞が破壊されることで「イソチオシアネート」という辛味成分に変換されます。胃腸が弱っていると、この辛味成分の刺激が強く、嘔吐や下痢の原因になることもあるので、愛犬の体調に応じて与えるかどうかを判断しましょう。

カリウム|過剰摂取は禁物、とくに腎臓病の犬は要注意

カリウムの過剰摂取は、血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」を引き起こす恐れがあります。カリウム値が高くなると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈など体の不調をきたし、重篤な場合は命を落とす場合もあるので、注意が必要なのです。

とくに、腎機能が衰えているシニア犬や腎臓病を患っている犬の場合は、カリウムの排出がうまくできないので、ブロッコリーを与える前に獣医師に相談してください。また、心機能が低下している犬の場合も与える前に必ず獣医師に相談しましょう。

ナトリウムやカリウムなど電解質の異常は、臨床症状などでははっきりとわからないことも多いものです。ブロッコリーを与える、与えないには関係なく、定期的な健康診断と血液検査の実施をおすすめします。

カルシウム・マグネシウム|結石のある犬は要注意

カルシウムはシュウ酸と結びつくと、シュウ酸カルシウム結石の原因になります。また、血液中のマグネシウム濃度が高くなると、ストルバイト尿石(リン酸アンモニウムマグネシウム)を作るリスクが高くなります。そのため、カルシウムとマグネシウムを豊富に含むブロッコリーは、結石の既往症がある犬には与えないほうが安心でしょう。

シュウ酸|尿路結石症の原因に

シュウ酸は、カルシウムと結びつきカルシウムバランスを保つ役割を果たす一方、腎臓や膀胱、尿道などの泌尿器で結石(シュウ酸カルシウム結晶)を作る原因となります。ブロッコリーに含まれるシュウ酸の量はほうれん草に比べればさほど多くはありませんが、尿路結石歴のある犬や心配のある犬には、ブロッコリーを与えないほうがよいでしょう。

タンパク質がアレルギー症状を引き起こす可能性もあり

緑黄色野菜であるブロッコリーには、レタスやキャベツなどの淡色野菜に比べると多いタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰反応することで起こる現象なので、稀にブロッコリーでアレルギーを起こす犬もあるようです。愛犬に初めてブロッコリーを与えるときは、まず少量から。しばらく様子を見て、皮膚の痒み、湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないことを確認してから、その後も与えるかどうかを決めてください。
特に、過去にアレルギー様反応を示したことのある犬や、ワクチン接種時やお薬に対して「薬疹」を示したことのある犬の場合には注意してください。

犬にブロッコリーを与えるときの注意ポイント|加熱して細かく刻んで与える

絨毯の上に腹這いになり、ブロッコリーを口に加えて真正面を見ている茶色いトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ブロッコリーを愛犬の食生活に取り入れる際の与え方や、おすすめの調理法などを紹介します。

与えてよい部位

ブロッコリーは、花芽の部分はもちろん、茎や葉っぱも犬に与えて大丈夫です。ただし、茎の根元の部分は固いので皮を厚めに剥いてあげるとよいでしょう。

与えるときの適量

犬にブロッコリーを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)51g~101g(中5房~中10房)
中型(6~15kg)116g~231g(中10房~中10房)
大型(20~50kg)286g~569g(大17房~大35房)

※ブロッコリー(茹で)中サイズの1房=10 g、大サイズ1房=16gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

ブロッコリーは生のままでは固いので、加熱してから与えます。茹でる、蒸す、電子レンジで加熱するなど、いずれの方法でもOKですが、茹でる場合はなるべく短時間に。長時間茹でると、ビタミンCやカリウムなどの栄養素がお湯の中に流れ出してしまいます。
なお、茹でる際に塩は加えないでください。加熱したブロッコリーは、喉に詰まらせないようなるべく細かく切って与えます。

また、ブロッコリースプラウトの場合は、さっと洗ってそのままご飯のトッピングにすればOK。ただし、よりスルフォラファンなどより多くの栄養成分を含んでいるので、過剰摂取にならないよう少量を与えるようにしましょう。

ブロッコリーは過剰摂取と既往症に気をつければ、犬に与えて大丈夫

ビタミン、ミネラル、食物繊維など体に役立つ栄養素が豊富なブロッコリー。より強い解毒作用や抗酸化作用が期待されるスプラウトも含め、愛犬の食生活に取り入れてみるのもよいかもしれません。ただし、過剰な摂取はかえって健康を害する原因にもなるので与える量には気をつけましょう。腎臓病や甲状腺機能低下や尿路結石などの病気が心配される場合は、与える前にかかりつけの獣医師に相談してください。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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