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獣医師監修|犬のフィラリア症ってどんな病気?症状や予防法について解説

フィラリア症は蚊によって媒介され、どんな犬でも感染するおそれのある病気です。今回は、そんな犬のフィラリア症の症状(初期・中期・末期)や治療法、予防法について解説します。まずは、フィラリア症の感染サイクルから見ていきましょう。

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犬のフィラリア症ってどんな病気?

ジャック・ラッセル・テリア
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フィラリア症(正式名:犬フィラリア症、和名:犬糸状虫症)とは、蚊が媒介したイヌフィラリア(以下、フィラリア)の幼虫が犬の体内に入り込み、体内で成長した虫が犬の心臓や肺動脈に寄生した結果、さまざまな不調を引き起こす病気のこと。フィラリア症の感染サイクルは以下のとおりです。

フィラリア症の感染サイクル

  1. フィラリア症に感染している犬の血液を蚊が吸い、蚊の体内にフィラリアの子虫(ミクロフィラリア)が入り込み、約2週間かけて蚊の体内で幼虫に成長します。

  2. フィラリアの幼虫が体内にいる蚊が、新たにほかの犬を吸血することで、吸血された犬の体内にフィラリアの幼虫が入り込みます。(感染)

  3. 犬の体内に入り込んだフィラリアの幼虫は、筋肉や脂肪のまわりなどで生活しながら2回の脱皮を繰り返し成長します。(感染後約2カ月)

  4. その後フィラリアの幼虫は血管へ入り、時間をかけて犬の心臓や肺動脈へ移動し、成虫となります。(感染後約6カ月)

  5. 犬の心臓や肺動脈に住み着いたフィラリアは、そこで新たにミクロフィラリアを産みます。

上記の1~5を繰り返すことで、蚊は犬から犬へとフィラリアを運び、感染を広げていきます。
では、犬が万が一フィラリア症に感染したら、どのような症状が見られるのでしょうか。

犬のフィラリア症の主な症状と治療法(初期・中期)

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
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犬のフィラリア症の初期症状と治療法

主な症状

初期段階ではほとんどが無症状です。その後、乾いた咳が出る・激しい運動や散歩を嫌がる・元気がないといった症状が出てきます。初期段階でフィラリア症感染に気づくときは、定期的な血液検査でたまたま見つかったというケースが多いでしょう。

主な治療法

体内の成虫の数が少なく軽症の場合は、予防薬を通年投与する治療が行われることがあります。この治療法は、新たに体内に入ってきた子虫に対して予防を続け、薬の種類によっては、通年投与することで、成虫の寿命を縮められることがわかっています。

犬のフィラリア症の中期症状と治療法

主な症状

中期のフィラリア症の症状としては、慢性的に咳が出る・食欲不振・元気消失・散歩や運動を嫌がるようになる・毛づやが悪くなる・腹水がたまるなどが挙げられます。この時期になると、ほとんどのかたが愛犬の異変に気づき、動物病院を受診するでしょう。

主な治療法

フィラリア症の中等症の治療では、体内の成虫を死滅させるために駆除薬(駆虫薬)の投与を行います。しかし、成虫が心臓で死滅して血管に詰まると、危険な状態に陥ることも。また、死滅した成虫が肺動脈の奥に流れることで、一時的に肺への負担が大きくなるため、この状態に耐えられると判断された犬だけがこの治療の対象です。

駆除薬を使えない場合は、軽症のときに用いられる「予防薬の通年投与」によって治療を行い、それも難しいと判断された場合は、腹水を抜いたり、咳を抑えたりする対処療法を行いながら経過観察します。

犬のフィラリア症の主な症状と治療法(末期)

ゴールデン・レトリーバー
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犬のフィラリア症の末期症状と治療法

主な症状

フィラリア症の末期症状としては、食欲低下・元気消失・痩せる・苦しそうに呼吸をする・咳をした際に吐血や嘔吐をする・腹水がたまる・運動時に失神する・血色素尿(赤みをおびた尿)が出る・歯ぐきが白くなる(貧血)などが挙げられます。

ただし、基本的に犬のフィラリア症は時間をかけて徐々に進行するものなので、ここまで重症化する前に何かしらの治療を始めているケースがほとんどです。

主な治療法

寄生している成虫の数が多いなど、重症化してしまった場合は、首の頚静脈を切開してそこから器具を挿入し、直接成虫を摘出する外科手術が行われることがあります。しかし、この方法でもすべての成虫を摘出することは難しいため、体内の成虫に対する投薬治療を続けるケースも少なくありません。

急激に状態が悪化する「大静脈症候群」に要注意

先述のとおり、犬のフィラリア症は基本的に徐々に進行していくものですが、ときどき「大静脈症候群」という急性のフィラリア症を発症するケースも見られます。

大静脈症候群とは肺動脈に寄生していた成虫が、右心房または右心房と右心室にまたいで移動することで、「三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう)」を引き起こし、血流が乱れて状態が急激に悪化する病気です。

大静脈症候群になると、血色素尿(茶色の尿)・呼吸困難・低血圧・虚脱(脱力し元気がない状態)などの症状が見られ、治療が遅れると死亡してしまうおそれもあります。大変危険な状態といえるので、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。
フィラリア症の症状については下記の記事でも解説していますので、ぜひご参照ください。

犬のフィラリア症の予防法

ペキニーズ
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このように、犬のフィラリア症は重篤な症状を引き起こすおそれのある恐ろしい病気ですが、正しい方法で予防薬を投与すれば、ほぼ100%の確率で予防することができます。

フィラリア症の予防薬とは?

フィラリア症の予防薬は、犬の体内に入って1カ月程度経ったフィラリアの幼虫を駆除するもので、蚊の発生後1カ月~活動を終えた1カ月後までの期間、投与するのが一般的です。
予防薬にはさまざまな種類があるので、価格や与えやすさはもちろん、ノミ・マダニ予防との組み合わせなども考慮し、かかりつけの獣医師とよく相談しながら選ぶようにしましょう。

フィラリア症予防薬(駆虫薬)の種類

経口薬タイプ(錠剤・粉薬)

ほかのタイプに比べて単価が低めで、月に1回投与するものが一般的です。薬によっては、腸内寄生虫を同時に予防できるものもあります。

スポットオンタイプ

犬の首の後ろに滴下するタイプで、月に1回投与するものが主流です。このタイプは、同時にノミ予防もできる製品が多いでしょう。

チュアブルタイプ

嗜好性が高くおやつのように与えられるタイプで、同時にノミ・マダニ・腸内寄生虫を予防できるものもあります。こちらのタイプも、基本的に月に1回の投与が必要です。

注射

注射の場合、予防できるのはフィラリア症のみですが、1回の接種で1年ほど効果が持続するものが多いです。

フィラリア症予防薬の投与期間

先述のとおり、フィラリア症の予防薬は、蚊の発生後1カ月~活動を終えた1カ月後まで投与するのが一般的です。そのため地域差はありますが、東京都の場合は、4~5月から12月までがフィラリアの予防期間とされることが多いでしょう。
詳しい投与期間についてはかかりつけの獣医師に相談し、最後の1回まで忘れずにしっかりと投与することが大切です。

ペット用虫よけスプレーを併用する方法も

犬のフィラリア症対策としては、予防薬の投与のみで十分ですが、お散歩やお出かけ前に犬用の虫よけスプレーを使用するのもいい方法でしょう。犬が注意したい虫は蚊以外にもたくさんいますので、虫が多くいそうなキャンプ場などに行く際はとくにおすすめです。
なお、虫よけスプレーは必ず犬用のものを使用し、人用のものは使用しないようにしてください。
フィラリア症対策については、下記の記事でも解説していますのでご参照ください。

室内飼いでも、無症状でも油断は禁物

ミックス
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今回は、犬のフィラリア症についてお話ししました。
犬のフィラリア症は、蚊によって媒介される病気ですが、ふだん家の中にいる犬であっても、蚊との接触をゼロにすることは難しいでしょう。散歩のときなどに蚊に刺される可能性も十分考えられるため、室内飼いだからといって油断は禁物です。
また、蚊の活動時期は毎年異なります。その年の気候などによって少しずつ変わってくるため、予防薬の投与期間などをあらかじめ獣医師に確認しておきましょう。

ちなみに、フィラリア症は犬から犬へ直接うつることはありませんので、ドッグランなどで一緒になっても心配はいりません。
いずれにしても、犬のフィラリア症は正しい方法で予防薬を投与することで、ほぼ100%予防できる病気です。感染した場合、初期の段階では無症状のことが多く、気づかないうちに進行してしまうおそれもあるため、飼い主さんが正しい知識をもってしっかりと対策してあげることが大切です。
参考/「いぬのきもち」2016年5月号『お出かけが多くなる季節だから予防は万全に!初夏のキケンな虫・寄生虫に注意して!』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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