愛犬を病気から守るためにも、定期的な予防接種は必要です。そこで今回は、シャンプーや運動、副作用などの予防接種後の注意点と、ワクチンの接種間隔やその日の犬の体調といった予防接種前の注意点についてまとめました。
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そもそもなぜ犬は予防接種を受ける必要があるの?
予防接種とは、病気を引き起こすウイルスや細菌を弱毒化あるいは不活化したもの(=ワクチン)を、犬の体内へ入れて免疫をつくり出し、病気にかからないようにするものです。
犬に必要な予防接種は、法律で義務付けられている「狂犬病ワクチン」と、飼い主さんの任意で接種する「混合ワクチン」、大きく分けて2種類あります。
狂犬病ワクチンとは
狂犬病は発症するとほぼ100%の確率で死亡する恐ろしい病気で、人にも感染する人獣共通感染症のひとつです。先述のとおり、法律によって生後91日以上のすべての犬に、年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。
混合ワクチンとは
混合ワクチンとは、犬ジステンパーウイルスや犬アデノウイルス、犬パルボウイルスなどによる感染症を予防するもので、予防できる病気の数によって2種~10種に分類されます。法律による義務はありませんが、混合ワクチンで予防できる病気は、感染するとリスクが大きいため、定期的な接種が推奨されています。
犬の狂犬病・混合ワクチンに関する詳しい情報は、以下の記事も参考にしてください。
なお、犬が予防接種を受けるときは、いくつかの注意点があります。ここからは、予防接種前後の注意点について見ていきましょう。
犬の予防接種後に注意したいこと①シャンプー・トリミング
予防接種後は体調不良を起こすことがあるため、しばらくは安静に過ごすことが大切です。シャンプーやトリミングは犬にとって体力を消耗する行為なので、予防接種後2~3日は最低でも控えるようにしましょう。
なお、動物病院によっては、1週間控えるよう指示されることもあります。その場合は必ず獣医師の指示に従ってください。
犬の予防接種後に注意したいこと②運動・お出かけ・散歩
シャンプー・トリミングと同様の理由から、ドッグランで走り回るといった激しい運動や、旅行やお出かけなど、犬の体に負担のかかる行動は、予防接種後2~3日は避けるようにしてください。
また、予防接種当日の散歩は控え、接種後数日はいつもより短めにするなど、愛犬の体調を見ながら散歩を行うようにしましょう。
犬の予防接種後に注意したいこと③副作用
ワクチンには副作用のリスクもつきものですので、正しく理解したうえで予防接種を受けることが大切です。
主な副作用
予防接種後に起こる副作用としては、顔の腫れや嘔吐、下痢、発熱などが挙げられます。副作用は基本的にワクチンを接種してから24時間以内に出ることが多いので、予防接種後の24時間は愛犬の様子をよく観察するようにし、異変が見られた場合は動物病院に連絡しましょう。
アナフィラキシーショックに要注意
危険な副作用のひとつに、アナフィラキシーショックというものがあります。これは急性のアレルギー症状で、ワクチン接種後数分~30分以内に起こることが多いです。主にけいれんや呼吸困難といった症状が見られますが、最悪の場合命を落としてしまうことも。
日本小動物獣医師会と麻布大学の共同疫学調査によると、ワクチン接種後にアナフィラキシーショックを起こした犬は1万頭あたり7.2頭とされていますが、万が一のことを考え、予防接種後は待合室などでしばらく様子を見ておくと安心でしょう。
副作用が出やすい犬種
ミニチュア・ダックスフンドはワクチンの副作用が出やすい犬種として知られているので、予防接種を受けた後はとくに注意して体調観察してあげるようにしましょう。
犬の予防接種前に注意したいこと①その日の体調
犬の体調がすぐれない日などは、予防接種を控える必要があります。以下に当てはまる場合は、事前に獣医師に申告するようにしてください。
予防接種を控えたほうがいい場合
- 元気がない・ぐったりしている
- 食欲がない
- 発熱している
- 激しく興奮している
- 下痢・嘔吐をしている
- 心臓病・腎臓病・肝臓病などの持病がある
- 老犬で著しく体力が衰えている
- 発情期・妊娠している など
過去にアナフィラキシーショックを起こした場合も注意
過去の予防接種でアナフィラキシーショックなどの副作用が見られた場合は、獣医師の判断によって予防接種を見送るケースもあります。
しかし、同じ病気に対するワクチンでも、メーカーによって使われている成分は若干異なるため、メーカーを変えたら副作用が出なくなったという事例も少なくありません。いずれにせよ、獣医師とよく相談して予防接種を受けるかどうかを決めるようにしてください。
犬の予防接種前に注意したいこと②ワクチンの接種間隔
先述のとおり、ワクチンは体の中で免疫反応を起こして、病原体に対する抗体をつけるものなので、接種した後は免疫を作るために体が反応します。そのため、複数のワクチンを同時接種すると、その分体の負担が大きくなる可能性が。
また、もしも副作用などが出た場合、どのワクチンが原因なのかがわからず、その後の対応に困ることもあります。すぐに予防接種をしなければならないなど、何か特別な事情があるとき以外は、余裕をもってワクチンスケジュールを立てるようにしてください。
狂犬病ワクチンと混合ワクチンの接種間隔
ワクチン接種をするときは、2週間~1か月ほど間隔を空けるのが望ましいという意見が多いです。また、どちらのワクチンを先に打つかで空けるべき間隔が異なることがあります。かかりつけの獣医師とよく相談して、接種間隔を決めるといいでしょう。
子犬のワクチンプログラムについても理解しておく
なお、生後1年未満の子犬は免疫をしっかり定着させるために、成犬よりも頻回に予防接種を受ける必要があります。子犬の狂犬病・混合ワクチンプログラム例は以下のとおりです。
子犬のワクチンプログラム一例
- 混合ワクチン接種(1回目):生後6~8週齢
- 混合ワクチン接種(2回目):1回目の混合ワクチン接種の3~4週間後
- 狂犬病予防接種:2回目の混合ワクチン接種の4週間後
- 混合ワクチン接種(3回目):狂犬病ワクチンの1週間後(16週齢以上)
愛犬のためにも予防接種前後の注意点を守ろう!
今回は、犬の予防接種前後の注意点などについて解説しました。
愛犬を危険な病気から守るためには、定期的な予防接種が必要ですから、ご紹介した注意点などを参考に、適切な方法で予防接種を受けるようにしましょう。
なお、以下の記事でも犬の予防接種について解説していますので、併せて参考にしてみてくださいね。
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。