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【獣医師監修】気管虚脱ってどんな病気?小型犬がなりやすいって本当?

小型犬に多いといわれる気管虚脱(きかんきょだつ)は、悪化すると呼吸困難などを起こすおそれのある病気です。ここでは、気管虚脱の症状や原因をはじめ、なりやすい犬種や具体的な治療法、家庭での対処法、予防法などについてくわしく解説します。

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気管虚脱とは?

ソファの上の犬
Dmytro Varavin/gettyimages
犬の気管虚脱とは、通常円筒形である気管が平たい形につぶれ、呼吸が困難になる病気です。

通常、犬の気管は丈夫な軟骨と膜構造が組み合わさって、円筒のような形になっています。頑丈な軟骨で支えられているため、健康な状態であれば激しく呼吸をしてもつぶれることはありません。

しかし、何らかの原因によって、軟骨の強度が低下したり、膜状の部分に緩みが生じたりすると、気管が本来の円筒状の形を保てずに平たくつぶれてしまいます。呼吸するたびに気管がつぶれ、空気の通り道が狭くなってしまう状態のことを気管虚脱といいます。

気管虚脱の症状は?ガーガーという呼吸音がするって本当?

犬が気管虚脱を発症すると、呼吸をしにくい状態が少しずつ悪化。むせるような空咳などの症状があらわれるようになり、病気が進行するにつれて、その回数や症状の収まりにくさが増していきます。

やがて気管の変形がさらに進むと、呼吸の際に「ガーガー」といったガチョウが鳴くような特徴的な呼吸音や咳が増える、さらに口を開けたまま「ゼーゼー」と苦しそうな呼吸が頻繁にみられるようにも。

気管虚脱のグレードとは

気管虚脱は、症状の進行程度によって4つのグレードに分けることができます。
  • グレード1:全体の25%程度の狭窄
  • グレード2:全体の50%程度の狭窄
  • グレード3:全体の75%程度の狭窄
  • グレード4:全体の75%以上の狭窄(気管がかなり閉塞している状態)
なお、グレード1の段階から症状が出る犬もいれば、グレード4まで無症状の犬もいるなど、症状のあらわれ方は個体差が大きいようです。軽い咳から始まり、重症化すると、チアノーゼや呼吸困難を起こすこともあるので、症状の有無にかかわらず、十分注意する必要があります。

気管虚脱の原因は?

気管虚脱の原因はまだ明確になっていないことが多いですが、先天的なものと後天的なものがあるといわれています。

小型犬は気管虚脱になりやすい?

気管虚脱は小型犬に多く発症し、大型犬ではまれであることから、遺伝的な要素も関係していると考えられます。チワワ、プードル、マルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアなどの小型犬がなりやすいといわれており、特に1才から5才の若いうちから発症が多く確認されているようです。

肥満や加齢などが原因で発症することも

後天的な要因としては肥満があり、肥満になると気管を取り巻く脂肪も増えるため、気管を圧迫しやすくなります。
ほかにも、加齢によって気管のまわりの軟骨が本来の強さを保てなくなってしまうケースや、リードを引っ張るクセのある犬が、首輪によって繰り返し気管を圧迫されることがきっかけで発症するなど、さまざまな原因が考えられます。

気管虚脱の治療法は?

窓を覗く犬
Eva Blanco/gettyimages
気管虚脱の治療法には、大きく分けて投薬などの内科的治療と、手術などの外科的治療があり、それぞれ目的が異なります。
内科的治療では、鎮咳剤や気管支拡張剤などの内服薬が用いられ、症状のコントロールと緩和が目的の対症療法です。
一方、外科的治療では、手術でつぶれた気管を矯正し、根本的な治療を試みるもの。最近では、手術でこれを目指す動物病院や、呼吸器専門の病院なども増えてきているようです。

気管虚脱の手術方法や費用は?

気管虚脱の手術方法は、気管外プロテーゼを装着し、糸によってつぶれた気管をひっぱり、正常な形状へと戻す方法が一般的です。手術時間はおよそ1時間半とされています。

手術費用は犬の状態や動物病院によって異なりますが、手術のみで50万円ほどが目安。また入院する場合は、別途入院費が必要で、入院日数は経過により差があります。

重度でも手術はできるの?

手術ができるかどうかは、先述したグレードよりも、どの部位がつぶれているかが大きく関係してきます
多くの犬が発症する位置である、首輪のあたりの気管であれば、グレード4でも手術は可能。しかし、気管が枝分かれして肺につながる部分(気管支)がつぶれている場合は、手術は難しいとされています。また、犬の体質や持病、年齢によって、手術が行えないケースもあります。
気管虚脱の症例写真
原因不明の犬の難病……気管がつぶれて呼吸ができなくなる『気管虚脱』とは(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
写真は、エックス線画像でグレード4と診断された犬の、手術前の気管の様子。この犬は呼吸をするのもやっとの状態でした。

手術内容など、詳しくは以下の記事で解説しています。

気管虚脱と診断された!飼い主さんの体験談や家での対処法

愛犬が気管虚脱だと診断されたことはある?
※2021年7月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 160人)
愛犬の気管虚脱に関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
ここからは、実際に気管虚脱だと診断された飼い主さんの体験談も参考に、家での対処法などを見ていきましょう。
「いぬのきもちアプリ」内で行ったアンケート調査によると、愛犬が気管虚脱だと診断されたことがある飼い主さんは、全体の2割程度となりました。

気管虚脱に気がつくきっかけで多かったのは「咳」

気管虚脱の発病に気づいたきっかけは?
※2021年7月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 160人)
愛犬の気管虚脱に関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
つづいて、気管虚脱に気がつくきっかけとなったのは、症状のひとつである「咳」がもっとも多い回答となりました。そのほか呼吸音や定期健診、ほかの病気の治療過程で発見した、などの声も。
愛犬が気管虚脱と診断されたら、まずはしっかり病気に向き合うことがとても大切です。それとあわせて、自宅でできる対応として、症状の悪化や再発を防止するためにも、気管に負担の少ない環境を整えてあげましょう。

エアコンを使って空調をコントロール

夏場のような高温多湿の場所は、犬の呼吸が荒くなるため気管に負担がかかりやすくなります。エアコンで空調をコントロールし、チリやほこりの除去などにも気を配りましょう。なお、お香やたばこなどの煙が出るものは、気管だけでなく呼吸器全体への負担にもなります。愛犬のいる室内では、一切やめるよう心がけましょう。

食事管理や適度な運動で体重管理

気管虚脱の原因のひとつである肥満を防ぎ、症状を悪化させないためにも、食事のコントロールや適度な運動は大切なポイントです。ただし、呼吸が激しくなりすぎるような運動は、かえって気管の負担になることもあるため配慮が必要です。
ドッグランで自由に走らせるなどの激しい運動や、それに伴う興奮などは避けるよう心がけ、愛犬の負担にならないようなペースや時間で、穏やかに散歩させる程度がよいでしょう。

首輪の場合はハーネスに変えてみても

首輪は、喉の部分に負担がかかりやすい傾向があります。ふだん散歩時などに首輪を使っている場合は、ハーネス(胴輪)に変えることを検討しましょう。ハーネスだと気管に負担をかけないため、症状悪化を防ぐ効果が期待できます。
ただし、ハーネスは使い方によっては、ますますリードを引っ張るようになってしまうことも。また、散歩中の拾い食いなどを防ぎにくいというリスクもあります。ハーネスにすべきかどうかは、獣医師に相談してみましょう。

実際に飼い主さんたちが実行している治療内容は?

では、飼い主さんたちは実際にどのような治療や家でのケアを行っているのでしょうか。回答の一部をご紹介します。
※2021年7月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 160人)

「飲み薬と、病院・自宅で酸素室を使用していました」
「病気がわかってから首輪をハーネスに替えた」
「病院で気管支拡張注射。家では常にクーラーで、暑い時間の散歩はNG。喉にかからない胴輪に買い直し、夏の外出時には保冷剤で喉周りを冷やしてあげるなどした」
「咳の出にくいハーネスをして、痩せたらすごくマシになった。生涯悪化することもなかったため、治療は不要だった」
「経過観察。胸とお腹を圧迫しないように抱っこして、顔が下がらないように顎を少し上げ気道確保しつつ手を舐めさせると痙攣が治ってくれることが多い」
胴輪については、下記の記事も参考にしてみてください。

気管虚脱は予防できるの?

カメラを見上げるジャックラッセルテリア
Eva Blanco/gettyimages
先述したように、気管虚脱の明確な理由はわっていないため、はっきりとした予防方法も確立されていません。そのため、できるだけ早く見つけてあげることがとても大切です。たとえば、「ときどき軽い咳が出る」といった症状に気づいたら、早めにかかりつけの動物病院に相談をすることをおすすめします。

そして、定期的に健康診断を受けることによって、気管虚脱を含めさまざまな病気の早期発見に役立ちます。定期健診は病気の再発防止につながることもあるので、成犬の場合は年に1回、7才以上のシニア犬の場合は半年に1回を目安に、受けるようにしましょう。

気管虚脱に似た病気や症状

長い階段の真ん中で休むフレンチブルドッグ
icebergpicture/gettyimages
気管虚脱は、「逆くしゃみ症候群」と区別がつきにくいかもしれません。逆くしゃみ症候群は生理現象のため、これだと思って様子をみていたら、気管虚脱の症状が悪化してしまったというケースもあるようですので、注意してください。

また、「軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)」も症状が似ているとされています。この病気になると、就寝時の大きないびき音や、興奮時に喉の周辺で呼吸に合わせてゲコゲコ、グーグーという音がするといった症状が。異変に気づいたら必ず動物病院を受診しましょう。

呼吸音や逆くしゃみ、いびきなどの症状については、以下の記事もあわせて参考にしてくださいね。

愛犬の体調の変化を見逃さず、すぐに獣医師に相談を

頭をかく犬
Jirakan/gettyimages
愛犬の異変にいかに早く気がつけるかということは、気管虚脱だけでなく、さまざまな病気において重要なポイントになります。
日ごろから愛犬とコミュニケーションをとって観察する習慣をつけ、病院での定期健診を行うことで、適切な対応がとれるようにしてあげたいですね。
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/kagio
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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