この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、交通事故による脊椎損傷を、懸命なリハビリによって克服したさんごちゃんのお話です。
脊椎をインプラントで固定する手術を決行
交通事故に遭い、少しでも早く大きな動物病院での手術が必要となった埼玉県Kさん夫妻の愛犬さんごちゃん。かかりつけ医の先生が最短で手術をしてくれる動物病院の手配をしてくれました。
「所沢にある日本小動物医療センターで1週間後に手術をすることになりました。でも、それまでの間、さんごは激しい痛みに耐えなければならなかったんです。かかりつけ医の先生が、手術までの間、毎日痛み止めの処置をしてくれたのが本当に助かりました。ただ、その処置のために、連日さんごをかかりつけ医に運ぶのが大変だったんです」とKさん。
さんごちゃんは椎体を脱臼していたものの、神経はなんとかつながっていたので、これ以上損傷を広げないよう、なるべく体を動かさず寝たままの姿勢で車に運ぶ必要がありました。そこで、Kさんのいぬ友達が、毎日シフトを組んで通院に協力してくれたそう。
「さんごが寝ている布団を大きな板に乗せて、それを4人で車まで運んだんです。仲間の協力があったからこそできたことでした」
日本小動物医療センターでは、脊椎にインプラントを入れて固定する大手術を行い、無事に成功。同医療センター内にはリハビリテーション科があったことから、手術後すぐにさんごちゃんはリハビリを開始することができました。
毎日のお世話と工夫
留守番時は、さんごちゃんが転倒してケガをしないよう広いケージ内で過ごさせます。家でのリハビリのあとは、ストレスをためないよう1日1回はお気に入りの公園に散歩に行くようにします。
1日1回、車いすに乗って正しい姿勢で立つ練習を行う
車いすを使って正しい姿勢で立つリハビリを1日に1回、自宅で行います。四肢を地面につけて立つことで、筋肉も鍛えられるそう。いつもご夫妻で協力して車いすに乗せます。
足を気にして爪をかじってしまうため、防止用の靴下をはかせる
まだ万全ではない右前足と後ろ足を気にしてか、さんごちゃんは足の爪をすべて噛み切ってしまうクセが。そのため、家の中では靴下をはかせ、ずれないようにバンドで固定します。
留守番時はベビー用サークルで囲った広いスペースで過ごすようにする
家族の不在時には、介護スキルがあるペットシッターさんに来てもらい、さんごちゃんは広いサークル内で過ごします。中には大きな布団を敷いて、転倒によるケガを防ぎ、呼びかけもできる留守番カメラも設置。
散歩時のカートはスロープつき。 替えの靴下などの備品はすべて持っていく
さんごちゃんが寝た姿勢でも乗れる犬用カートは、スロープもついたすぐれモノ。散歩時には、替えの靴下や、さんごちゃんが土の上などに座ったとき、尿道をばい菌から守るためのシートなども携帯するようにします。
リハビリ専門医の指導に従い1日1回、背中や足のマッサージを行う
理学療法士が作成してくれた写真入りのテキストに従ってマッサージやストレッチを毎日行います。肩甲骨をほぐしたり、足の筋肉がかたい箇所などをマッサージしたりします。
次回は術後のリハビリによって、奇跡的な回復をしたさんごちゃんの様子をレポートします。
※各情報は「いぬのきもち」2022年9月号発売時のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年9月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
取材協力/いづみ犬と猫の病院、D&C Physical Therapy
写真/尾﨑たまき
取材・文/袴 もな