犬好きの中でも、特に熱狂的なファンをもつのが日本犬。昔から日本人に愛され、暮らしをともにしてきたのが、その理由の一つかもしれません。ここではそんな日本を原産とする犬の種類や性格、飼い方のコツまでをクローズアップ! 日本犬ならではの魅力とは何かに迫ります。
「日本犬を飼ってみたい」「もっと知りたい」と思っている方、ぜひ参考にしてください!
日本犬の種類は?
日本犬とは一般的に、日本土着の犬の性格や外見をそのまま残そうとしている犬で、北海道、秋田、柴、甲斐、紀伊、四国の6犬種が存在します。
このほかに、日本原産の犬に外国の犬種を交配してできた新しい犬種があります。日本スピッツ、土佐、狆、日本テリア、グレート・ジャパニーズ・ドッグの5犬種がそれです。
今回はそれぞれの犬種について、性格・飼い方、大きさ、毛色の3つの項目を解説していきます。
柴
縄文時代から日本人と暮らしてきた、土着犬が柴のルーツ。日本人にとって身近な存在ですが、「日本の文化を担い、ほとんど人為的影響を受けていないもの」として、天然記念物に指定されています。
性格・飼い方
勇敢で賢いため、番犬としても活躍してきた歴史があります。飼い主さんには忠実ですが独立心が強く、警戒心が強いという特徴がありますから、子犬のころからいろいろなものに慣れさせるなどしてしつけを行う必要があります。
大きさ
柴はオスとメスで体の大きさが異なる犬種です。オスのほうが一回り大きく、体重10.5キログラム、体高(地面から肩の高さ)39.5センチメートル。メスは体重8キログラム、体高36.5センチメートルが基本とされています。「シバ」とは「小さなもの」を意味していて、日本犬の分類の中では唯一小型にあたる犬種です。
豆柴は、柴の中でも体格が小さなものを指す呼び名で、種類として独立しているわけではありません。
毛色
柴犬には赤、白、黒、胡麻の4つの毛色があります。
赤は、茶色に近い黄赤
白は、クリーム色に近い白。
黒は、黒、赤、白のコンビネーション。
胡麻は、赤に黒が混じっている珍しい毛色です。
北海道
別名アイヌ犬とも呼ばれ、アイヌ民族の人々によって日本に連れてこられた犬種だと考えられています。かつては鹿狩りをはじめとする大型獣の狩猟に使用されていました。1937年には国の天然記念物に指定されました。また、一部の犬は濃い藍色の舌をしていることでも知られています。某携帯電話会社のお父さん犬が北海道犬として有名です。
性格・飼い方
勇敢でとても忠実。飼い主に対する忠誠心があって、きちんとしつけを行えばよい家庭犬になるといわれています。逆に飼い主さん以外にはあまりなつかない、愛想がない性格だとも。
大きさ
体重20~30キログラム、体高46~56センチメートルが基本とされています。日本犬の分類の中では中型にあたります。
毛色
胡麻、虎(赤に黒が混じった毛色)、赤、黒、黒褐色、白などさまざまな毛色があります。
秋田
日本犬の中でもっとも大きなのがこの秋田。古来から秋田県周辺で熊猟犬として飼われていた秋田マタギ犬に、土佐やマスティフ系の犬種を掛け合わせた犬種です。かつては闘犬用に飼育されていたという歴史がありますが、闘犬が廃れると狩猟に使われるようになりました。1930年代には絶滅の危機に瀕していましたが、この犬種を愛する人々によって救われ、現在に至ります。
性格・飼い方
多くは落ち着いた性格をしていますが、感情を表に出すことが少ないため、しつけには忍耐が必要かもしれません。また闘犬として育てられていた歴史があるためか、オスはほかの犬とけんかをしやすい傾向があるといわれています。
大きさ
体重34~50キログラム、体高60~71センチメートルが基本とされています。日本犬はその大きさによって大型、中型、小型に分類されていますが、秋田は唯一大型にあたる犬種です。
毛色
赤、虎、白、胡麻の4色があります。白以外の毛色は、体の内側の色が白くなっています。
甲斐
中世から山梨県近辺の山岳地帯に生息していた犬。もともとは狩猟犬として活躍していました。1934年に天然記念物に指定されています。
性格・飼い方
特定の個人だけになつき、反抗的で頑固なところがあるといわれています。1人の飼い主さんに一生尽くす「一代一主の犬」とも呼ばれています。ほかの犬や人との接触でトラブルが起こらないよう、飼育にあたってはしつけや行動の管理を怠らないようにしましょう。
大きさ
体重は16~18キログラム、体高は46~58センチメートルが基本とされています。日本犬の分類の中では中型にあたります。
毛色
黒虎、赤虎、赤の3色。虎毛とは黒と赤の混じった毛色。子犬のときに1色の毛色でも、成長するにつれて虎毛になることが特徴です。
紀州
もともとはイノシシ狩りの狩猟犬として、三重県から和歌山県周辺の山岳地帯に生息した犬種といわれています。ほかの日本犬5犬種と同じく、天然記念物に指定されています。
性格・飼い方
飼い主には忠実ですが他人には警戒心が強く、気性が荒いという言い方をする人もいます。もともとは賢く、指示された行動に従うことができる犬種ですから、飼い主さんがしっかり信頼関係をつくれば、優秀な家庭犬にもなってくれます。
大きさ
体高46~55センチメートル、体重15~23キログラムが基本とされています。日本犬の分類の中では中型にあたります。
毛色
白、赤、胡麻の3色がありますが、白が多く見られ、赤、胡麻は少数です。
四国
古代から高知県周辺に生息し、狩猟犬として飼われていました。ほかの日本犬と同じく、天然記念物に指定されています。
性格・飼い方
警戒心が強く、狩猟に対する欲求が旺盛で、飼い主さんには従順だとされています。ほかの日本犬5犬種と同様、もともとは狩猟犬とされてきましたから、飼い主さんとしっかり信頼関係を作って、子犬のころからほかの犬とのトラブルを起こさないよう慎重にしつけを行う必要があります。
大きさ
体重15~20キログラム、体高46~55センチメートルが基本とされています。
毛色
日本スピッツ
一説によると、1920年代にシベリアを経由して日本に持ち込まれた犬が起源になっているといわれています。1950年代に日本で人気が高まりました。豊富な純白の被毛と、とがった口元と三角形の立ち耳が特徴です。
性格・飼い方
かつては「よく吠える」という特徴がありましたが、改良によってこの特徴は薄れてきています。賢く明るい性格のため、きちんとしつけを行えば優秀な家庭犬になってくれるでしょう。
大きさ
体重5~6キログラム、体高30~36センチが基本とされています。
毛色
土佐
四国とマスティフ、ブルドッグ、ジャーマン・ポインター、グレート・デーン、ブル・テリアなどの犬種を掛け合わせて、闘犬用の犬種が作られました。それが土佐です。別名ジャパニーズ・マスティフとも呼ばれていました。
性格・飼い方
もともとは闘犬として飼育されていた歴史があるため、ほかの人や犬に危害を加えないよう、慎重に飼育し、きちんとしつけを行う必要がある犬種です。
大きさ
体重30~40キログラム、体高62~65センチメートルが基本とされています。
毛色
赤、フォーン(金色がかった茶色)、アプリコット(あんず色。赤みを帯びた黄色)、黒、ブリンドル(地色にほかの色の差し毛が混じっているもの)などがあります。胸や足にちいさな白い斑点が見られることがあります。
狆
かつての日本の上流階級の愛玩犬として飼われてきた狆。もともとはチベタン・スパニエルから発達した犬種だと考えられています。
性格・飼い方
利口でおとなしく愛らしいという特徴があります。また室内犬として飼育されてきたため、アクティブに外で遊ぶより室内でゆったりと過ごす犬が多いようです。
大きさ
体重2~5キログラム、体高23~25センチメートルが基本とされています。
毛色
白地に黒または赤のまだらがあるのが基本で、まだらは左右対称であることが好ましいとされています。
日本テリア
1700年代の初頭に、当時交易のあったオランダから日本に持ち込まれたスムース・フォックス・テリアと、日本の土着犬との交配によって生まれた犬種です。
性格・飼い方
機敏ではつらつとしているとされています。もともと家庭犬として育てられてきた犬種のため、しつけを行えば飼い主さんとの間にしっかりとした信頼関係を築けるでしょう。
大きさ
体重4.5~6キログラム、体高32.5~33.5センチメートルが基本とされています。
毛色
頭部が黒、白、タン(黄褐色)で、体は白に黒もしくはタンの斑点があります。
グレート・ジャパニーズ・ドッグ
俗称アメリカン・アキタ。第2次世界大戦後、日本に駐留した関係者たちがアメリカに持ち帰った秋田犬が元祖。マスティフやジャーマン・シェパード・ドッグの特徴が色濃く残るタイプが数多くアメリカに渡ったため、日本の秋田とは別系統の犬として発展しています。
性格・飼い方
機敏で反応がよく、従順で勇敢。優しく人なつこいとされています。もともとの犬種は日本の秋田なので、頑固で、場合によっては、ほかの犬に攻撃的になる可能性もあります。家庭犬として飼育する場合は子犬のころからしっかりしつけを行う必要があるのも秋田と同様です。
大きさ
体重38~48キログラム、体高61~71センチが基本とされています。
毛色
レッド、フォーン、ホワイトなどのほか、地色がホワイトで頭部および胴体の3分の1以上に均等で大きなまだらがあるピントーなど、多様な毛色があります。
まとめ
「日本の犬」と聞くと柴に代表される立ち耳の、いわゆる「和犬」を想像しますが、じつはそれ以外にも日本原産の犬種は存在していて、それぞれに個性的な外観や特徴的な性格を持っています。また、作り出されてきた歴史などを踏まえておくと、その犬種ならではの性格や飼い方のポイントがより納得できるものになるはずです。
参考/いぬのきもち特別編集『柴犬との暮らしがもっと楽しくなる本』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/コージー根本
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。