1. トップ
  2. 犬と暮らす
  3. 飼い方
  4. 食事・ドッグフード
  5. 【獣医師監修】犬に桃を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

犬と暮らす

UP DATE

【獣医師監修】犬に桃を与えるときは注意が必要。与えるメリットとデメリットを解説

桃は犬が食べても大丈夫なフルーツです。ビタミン、ミネラル、食物繊維など、犬の体にとってよい働きをする栄養素が含まれています。ただし、桃は食物アレルギーの原因となる果物でもあり、犬に与える際は注意が必要です。犬にとってメリットのある桃の栄養素と与える際の注意点を紹介します。

佐野 忠士 先生

犬に桃を与えるときはアレルギーに要注意

水色の背景に桃。
kuppa_rock/gettyimages
「いぬのきもち」のアプリユーザーにアンケートをとったところ、8割近くの飼い主さんが「愛犬に桃を与えている」という回答でした。

実際に、桃は犬に与えてもよいフルーツのひとつです。
桃は、カテキン、ビタミンC、ビタミン E、食物繊維」など、さまざまな栄養素を豊富に含んでいます。なかでも、カテキン・ビタミンC・ビタミンEには強い抗酸化作用があるので、病気の予防や老化の抑制、若さのキープに役立つと考えられます。

ただし、桃はアレルギー食品の一種であるため、与える際には注意が必要です。桃はりんごやさくらんぼと同じバラ科の植物なので、それらの果物にアレルギーがあるとわかっている犬には、与えないようにしましょう。

また、アレルギーの有無がわからない場合も、初めて桃を食べさせるときは注意してください。

桃のおもな栄養素|90%近い水分、カロリーはやや高め

桃がたくさんなっている木の下で、気持ちよさそうに舌を出して座っている中型犬(mix)
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
桃に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー38kal
水分88.7g
タンパク質0.6g
脂質0.1g
炭水化物10.2g
灰分(無機質)0.4g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬が桃を食べるメリット|抗酸化作用の強い栄養素で健康と若さをキープ

頭に白いターバンを巻いて、顔が丸くなったキュートなトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬にとって、桃に含まれるどんな栄養素が役に立つのでしょうか。おもな成分のなかから、犬の健康に役立ちそうなものを紹介します。

カテキン|強い抗酸化作用で病気予防とアンチエイジング

桃に含まれる代表的な栄養素のひとつが、「カテキン」です。
「カテキン」は、植物の光合成によってできる「ポリフェノール」の一種で、赤ワインやナスの紫色の色素「アントシアニン」や、大豆に含まれる「イソフラボン」などの仲間。お茶や紅茶にも含まれている成分です。

「カテキン」には、強い抗菌作用があるといわれ、病気の予防や老化の抑止に役立つほか、血圧の上昇を抑えたり、血中コレステロールを下げたりする作用も期待されています。

ビタミンC・E|病気の予防と老化の抑制、免疫力アップ

桃はビタミンCも豊富です。
ビタミンCには、病気や老化の要因になると考えられる活性酸素を強力な抗酸化作用で取り除く働きがあります。ほかにも鉄分の吸収促進や、解毒やホルモン代謝を担う酵素のサポート、コラーゲン合成への関与など、犬の体のなかでさまざまに役立ってくれます。
ちなみに、犬は体内でビタミンCを合成することができるため、長く「犬にビタミン摂取は不要」と考えられてきました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。5歳を過ぎる頃からビタミンCの合成能力が衰え始めるとも考えられるので、食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るのもよいかもしれません。


また、ビタミンEに含まれる「トコフェロール」と呼ばれている栄養素には、細胞膜が酸化するのを防ぐ作用があります。ビタミンEはビタミンCと一緒に摂ることで、より効率的にその作用を発揮するといわれています。

カリウム|高血圧の予防

桃に含まれているカリウムには、体液の浸透圧を調整する作用があります。体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が高くなるのを抑制。神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっていて、健康な体の維持にはなくてはならない大事なミネラルのひとつといえます。

ただし、腎臓病がある場合にはカリウムの摂取には注意が必要です。腎臓の機能が低下すると尿へのカリウムの排出が減って、血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」となるからです。「高カリウム血症」になると、四肢のしびれや筋力の低下、不整脈などを引き起こす危険があるので、注意が必要です。

食物繊維|バランスのよい食物繊維で腸活

食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維の働きは、糖質の吸収をゆるやかにして、食後の血糖値の急激な上昇を抑えること。コレステロールを排出する作用もあります。一方の不溶性食物繊維には、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便の量を増やすことで腸を刺激し、排便を促す作用があります。

桃には、これら2つの食物繊維がバランスよく含まれています。とくに、腸内細菌のエサとなって善玉菌を増やしてくれる、水溶性の食物繊維「ペクチン」は、便秘や下痢を繰り返すお腹の弱い犬に役立つでしょう。

犬が桃を食べるデメリット|「アミグダリン中毒」と「バラ科アレルギー」に注意

大きく口を開けてあくびをしている焦茶色の犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
栄養豊富な桃でも、種には有毒物質があり、果実の部分も過剰摂取とアレルギーに注意が必要です。以下に注意すべきポイントを紹介します。

アミグダリン|種の中に有毒物質あり!

桃の種の中には、「アミグダリン」という有毒な成分が含まれています。このアミグダリンは、犬の腸の中で分解されると「シアン化水素」を発生させ、「アミグダリン中毒」を引き起こす原因となります。

犬の大きさや体調などにもよりますが、中毒を起こすと、食後30分〜1時間くらいで痙攣、呼吸困難、下痢、嘔吐などの症状が現れます。大量に種を食べない限り重篤な状態に陥る心配はありませんが、犬が桃の種を口にしないよう注意しましょう。

なお、アミグダリンは種の中にセルロースでコーティングされた状態で入っているので、種を噛み砕かずに丸呑みした場合は、そのまま便として体外に出てくるので大丈夫ですが、嚙み砕いてしまう場合もあるので種ごと与えないようにしてください。

カリウム|腎臓病の犬は要注意!

カリウムは、過剰摂取すると血液中のカリウム濃度が上がる「高カリウム血症」を引き起こす恐れがあります。血液中のカリウム値が高くなると、四肢のしびれや筋力の低下、嘔吐、不整脈、頻脈などの症状が現れ、重篤な場合は命を落とす場合もあります。

とくに、腎臓病を患っている犬やシニア犬で腎機能が衰えている場合は、カリウムの排出がうまくできない可能性があるので注意しましょう。

カリウムなど、体内の水分に含まれる電解質のバランスへ影響については、それぞれの個体で大きく異なってきます。定期的な血液検査、健康診断でかかりつけの獣医師に相談するようにしてください。

食物アレルギー|バラ科の果物のアレルギーに注意!

桃は、りんごやさくらんぼと同じバラ科の果物で、まれにアナフィラキーショックを引き起こすことのある、アレルギー食品のひとつです。アレルギー反応の症状は、皮膚の発疹や腫れ、皮膚の痒み、下痢や嘔吐など。以前にりんごやさくらんぼを食べてアレルギーの症状が見られた犬には、桃は与えないでください。

犬に桃を与えるときの注意ポイント|皮と種を除いて、細かくカットして

桃色の網のようなターバンを頭全体に巻き、胸と背中にブルーのリボンがついている桃色の洋服を着てカメラを見つめる黒いミニチュア•ピンシャー
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬に桃を与える前に、以下の注意点をチェックしておきましょう。

与えてよい部位

有毒物質「アミグダリン」が含まれている種はもちろん、葉っぱや皮も消化しにくいので与えないでください。種は、犬が丸呑みして喉に詰まらせる恐れもあります。

なお、アミグダリンは種だけでなく、果肉の部分にも少量ですが含まれています。実が熟すにつれてなくなっていくのですが、未成熟の青い実には多く含まれています。愛犬と一緒に桃狩りに行った際や、庭に桃の木がある場合は、落ちている青い桃の実を犬がかじったり、丸呑みしたりしないよう注意しましょう。

与えるときの適量

犬に桃を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)49g~98g(中 0.25個~中0.5個)
中型(6~15kg)113g~225g(大0.5個~大1個)
大型(20~50kg)279g~554g(中1.5個~中3個)

※桃は中1個約224g(可食部約190g)、大1個約264g(可食部約224g)として計算
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

皮を剥き、種を取り除き、愛犬が喉に詰まらせないよう、実の部分だけを小さくカットします。

タンパク質にアレルギー反応を示す場合も

桃には、微量ですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に免疫機能が過剰に反応して起こるものなので、桃がアレルギー源となる可能性もゼロではありません。りんごやさくらんぼなどのバラ科の果物に対するアレルギーがなくても、以前にも何らかの食物アレルギーを起こしている場合は、初めて桃を与えるときは慎重に。少し与えて、食べたあとに愛犬の様子に変化がないか、よく観察してください。

缶詰など人間用に加工されたものは与えない

桃は糖分が多めで、カロリーが高めのフルーツです。缶詰の桃となると、さらに糖分が多くなるので、犬には与えないほうがよいでしょう。そのほか、桃ジュース、桃ゼリー、桃ジャムなど人間用に加工されたものも、愛犬には与えるのは避けましょう。

摂取量とアレルギーに気をつければ、桃は犬に与えてOK!

「カテキン」「ビタミンC・E」「βカロテン」などの栄養が豊富な桃。糖分が多くカロリーが高めなので、愛犬の体に合った適量を守り、アレルギーの有無に気をつければ、愛犬に与えてもよいでしょう。夏の暑さにぐったりして、食事や水分をあまり摂らない場合は、桃から水分とカロリーを補給するのもよいかもしれません。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
CATEGORY   犬と暮らす

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬と暮らす」の新着記事

新着記事をもっと見る