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【獣医師監修】犬に大根を与えても大丈夫。大根を食べるメリットと与え方を解説
大根は基本的に犬が食べてもよい野菜です。ビタミンCやカリウム、消化を助ける酵素「ジアスターゼ」や殺菌作用のある「イソチオシアナート」などが含まれているほか、葉の部分にもβカロテンやカルシウムなどの栄養が豊富です。犬に大根を与えるメリットと与え方を紹介します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬は適量なら大根を食べても大丈夫
大根には、犬が中毒を起こすような有害物質は含まれていないので、犬に与えても大丈夫です。
大根の栄養素でよく知られているのが、大根おろしに多く含まれる酵素の「ジアスターゼ」。大根をすりおろすと活性化して消化を助けてくれます。さらに、大根の辛味成分「イソチオシアナート」という成分には殺菌作用や血液をサラサラにする作用があるといわれています。これらの働きは、人間が食べた場合の効果として確認されているものですが、犬にとっても同様の働きが期待できるのではないかと考えられます。
ほかにも、大根には豊富な水分やビタミンC、カリウム、食物繊維など犬の健康保持に役立つ栄養素が豊富に含まれています。また、大根の葉にもβカロテンや葉酸、カルシウムなどの栄養が含まれているので、根の部分だけでなく葉っぱも犬に与えて大丈夫です。
ただし、大根には微量ながら甲状腺ホルモンの分泌を阻害する「ゴイトロゲン(グルコシノレート)」という成分が含まれているので、甲状腺疾患のある犬の場合は念のため注意が必要です。
犬の体にメリットだと考えられる栄養素とその役割、そして与える際の注意点も含めた与え方を紹介します。
大根のおもな栄養素|ほぼ95%が水分
大根に含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分
エネルギー | 15kal |
---|---|
水分 | 94.6g |
タンパク質 | 0.5g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 4.1g |
灰分(無機質) | 0.6g |
文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照
犬が大根を食べるメリット|豊富な水分と栄養素、酵素で体調を整え、健康をキープ
犬の体に役立つと考えられる大根のおもな栄養成分を紹介します。
水分|約95%の水分、熱中症や脱水の予防にも役立つ
大根の根の部分は、約95%が水分。犬は夏バテすると水すら飲む元気がなくなることがあるので、そんなときは大根から水分補給を図るのもよいかもしれません。もちろん、水分不足になるのは夏場だけでなく、空気が乾燥し、かつ暖房で室内が温められている冬場にも考えられます。大根は可食部100gで15kcalしかないので、カロリーオーバーをあまり心配せずにおやつに取り入れられます。
日頃から十分に水を与えたうえで、熱中症や脱水の予防のためにおやつで大根を与えるようにしましょう。
ビタミンC|病気予防とアンチエイジング
大根にはビタミンCが含まれています。
ビタミンCには、病気や老化の原因と考えられる活性酸素を取り除く強力な抗酸化作用があります。さらに、鉄分の吸収促進や、解毒やホルモン代謝を担う酵素のサポート、コラーゲン合成への関与など、犬の体内でさまざまに役立ってくれます。
ちなみに、犬は体内でビタミンCを合成することができるため、長く「犬にビタミン摂取は不要」と考えられてきました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。5歳を過ぎる頃からビタミンCの合成能力が衰え始めるとも考えられるので、食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るのもよいかもしれません。
カリウム|高血圧の予防、ただし腎臓疾患の犬は要注意
大根に含まれるミネラルのひとつ、「カリウム」には体液の浸透圧を調整する作用があります。体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧が高くなるのを抑えてくれます。神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関わっているので、犬の体を健康に保つのに役立つ大切な栄養素だといえます。
ただし、高齢で腎臓機能が低くなっている犬や腎臓病を患っている場合は、カリウムの摂取量に注意が必要です。健康な犬であれば、余分なカリウムは尿で体外に排出されますが、過剰摂取は健康な犬の腎臓にも負担となります。さらに腎臓の機能が低下していると十分な排出がされず、血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」になる可能性があるので注意しましょう。
アミラーゼ|消化酵素で胃腸の働きをサポート
大根にはタンパク質の消化を助ける「ジアスターゼ」という酵素が含まれています。大根をすりおろすことで活性化する酵素なので、胃腸の具合がよくないときにフードに大根おろしの絞り汁をかけてやるのもよいでしょう。
アミラーゼは熱に弱いので加熱はせず、おろしたてを生のまま与えます。
イソチオシアネート|殺菌作用、血液サラサラ作用に期待
大根の辛味成分「イソチオシアネート」には、抗菌・殺菌作用や血液をサラサラにする作用があるといわれています。さらに、がん予防の効果も期待されていますが、いずれも犬に同様の効果が期待されるかどうかの実証は今のところ報告されていません。
食物繊維|腸内環境の改善で下痢や便秘を予防
食物繊維には、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維の役割は、腸の中で糖質の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を穏やかにすることと、コレステロールを体外に出すこと。一方の不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便のカサを増して腸壁を刺激。腸のぜん動運動が促されることで、便秘解消につながるというわけです。
大根には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれていますが、不溶性のほうが水溶性の約2倍(可食部同量比)含まれているので、過剰に摂取すると便が大きくなり過ぎて、逆に便が出にくくなるかもしれません。
下痢や便秘の予防、改善に役立てるなら、与え過ぎないことが大切です。
大根の葉にも犬の体に役立つ豊富な栄養素
緑色の葉っぱも栄養が豊富です。
たとえば、βカロテン。犬の体内に入るとビタミンAに変換されて作用します。ビタミンAには、視力、皮膚、被毛を健康な状態に保ったり、丈夫な粘膜や歯をつくったりする働きがあります。さらに、βカロテン自体には強い抗酸化作用があるので、免疫力を高めて病気を予防する効果が期待できます。
ちなみに、従来、βカロテンは犬の体内で必要な分だけビタミンAに変換されるので、過剰摂取になる心配はないといわれてきましたが、犬の体がβカロテンからビタミンAを生成する能力がほかの動物に比べて高いことが、最近の研究からわかってきました。ビタミンAを過剰に摂取すると体内に蓄積され、肝臓に負担をかけたり、中毒や副作用を生じたりすることがあるので、βカロテンを摂り過ぎないよう注意が必要です。
甲状腺疾患のある犬は注意
大根、小松菜、キャベツ、クレソン、カリフラワーなど「アブラナ科」の植物には、甲状腺ホルモンの分泌を阻害する「ゴイトロゲン(グルコシノレート)」という成分が含まれています。甲状腺ホルモンが欠乏すると、運動性の低下や無気力の状態になることがあります。大量に大根を与え続けなければ、それほど心配はないと考えられています。ただし、もともと犬は、甲状腺の機能がうまく働かない「甲状腺機能低下症」が発生しやすい動物なので、甲状腺の疾患と診断されている犬の場合は、大根を与えないほうがよいでしょう。
犬に大根を与えるときの注意ポイント|消化酵素の働きに期待するなら生で
栄養豊富な大根を愛犬の健康に役立てるためには、どんな与え方がよいのでしょうか。おすすめの与え方と与える際の注意点は以下の通りです。
与えてよい部位
大根の根(白い部分)、緑色の葉の部分、どちらも犬に与えて大丈夫です。
根の部分は、葉に近いほうが甘味があり、根に近いほど辛味があります。大根にはさまざまな種類がありますが、一般的に夏場の大根は水分が少なく辛味が強め、冬場の大根は水分が多く甘味が多いとされています。
与えるときの適量
犬に大根を与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。
また、犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取につながることもあるので注意しましょう。
犬の体重目安 | 1日あたりの接種可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 125g~249g(輪切り2㎝~5㎝) |
中型(6~15kg) | 286g~569g(1/3本~3/5本) |
大型(20~50kg) | 706g~1404g(4/5本~1・1/2本) |
※大根M1本900gとして算出
※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出
調理方法
もし、大根を食べさせた愛犬に上記のような症状が現れた場合、必要に応じてかかりつけの動物病院で診察を受けましょう。また、もしものケースに備えて、深夜でも診察を受けてくれる動物病院も確認しておくことをおすすめします。
タンパク質を含むので食物アレルギーにも注意
大根には、わずかですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、タンパク質に自己免疫機能が可能に反応することで生じるので、ごく稀に大根にアレルギー反応を示す犬もあります。最初は少し与えて、体調に変化がないかを確認しましょう。
大根は葉っぱも含めて犬が食べても大丈夫
一年を通じて手軽に手に入る大根。約95%は水分ですが、犬の体にプラスとなる栄養もたくさん含まれていることがわかりました。青々した葉付きの大根が手に入ったら、葉っぱの部分も含めて愛犬の健康維持に役立ててはいかがでしょうか。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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