犬と暮らす
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【獣医師監修】犬にアルコール(お酒)は絶対にNG。誤飲してしまったときの症状と対処方法
犬はアルコール(お酒)を舐めただけでも、中毒症状が出ることがあります。「家呑み」が多くなった昨今、お酒を床にこぼしてしまったときや飼い主が目を離した隙に、愛犬がうっかり口にしてしまったらたいへん! 万が一の場合に備えて、犬がアルコールを誤飲した場合の症状と対処法を紹介します。
佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬はアルコールを摂取してはいけない。命の危険あり
犬の体はアルコールの成分を急速に吸収するので、たとえ少量であってもすぐに酩酊したり、脳幹の働きが抑制されたりします。そして、アルコールの成分は犬の体内に長く残るため、呼吸器や心臓、肝臓、腎臓など全身に悪影響を及ぼします。昏睡状態に陥ると心肺機能が非常に低下するので、眠ったまま死んでしまう危険性も非常に高いです。また、嘔吐が生じた場合、喉頭(こうとう)の機能が低下していることが多く、誤嚥や窒息を生じてしまいます。
死に至らなかったとしても、意識が酩酊してフラフラしているうちに高いところから落ちて大怪我する危険性も考えられます。
犬が自分から進んでアルコール(お酒)を飲むことは考えられませんが、飼い主が飲んでいるものに興味を示し、目を離した隙に舐めてしまう可能性は十分考えられます。
人間からすれば「少しくらいなら大丈夫では」と考えがちですが、甘く考えるのは禁物です。家でお酒を飲む場合は、愛犬が絶対に口にしないよう注意してください。
犬がアルコールを摂取したときに見られる症状|ふらつく、嘔吐、意識混濁、昏睡など
アルコール(エタノール)中毒が考えられる症状
- 足がフラフラして歩けない
- ぼんやりしている
- ぐったりしている
- 嘔吐、下痢
- 意識がもうろうとしていて、呼びかけても反応が鈍い
- 呼吸や脈が弱い
とくに、意識がもうろうとして、呼吸や脈が弱くなっていたら、命にかかわる非常に危険な状態です。
症状が出るまでの時間
犬がアルコールを摂取してしまった場合の対処方法
病院へ
その際、アルコールの種類と度数、摂取した量、摂取した時間、何らかの症状が出ているときは現在の状態を伝えてください。
その後、獣医師の指示にしたがって病院を受診し、適切な処置を受けましょう。
無理矢理に吐かせようとするなど、素人判断で応急処置をするのは危険です。人間と犬とは体の機能が違うので、自己判断で応急処置はせず、必ず獣医師に任せてください。
病院での治療方法
◆催吐処置
胃の中から体に吸収されるアルコール量を減らすために、「催吐処置」を行う場合があります。犬が嘔吐を催しやすい薬剤を使い、犬の体に負担をかけないよう注意しながら行われます。
◆胃洗浄
麻酔をかけて犬の口や鼻からチューブを入れて、胃の中を洗浄します。アルコールを誤飲してから1時間以内に行うと効果が期待できます。
◆活性炭治療
中毒物質を吸着する性質のある活性炭を飲ませることで、犬の体に中毒症状を引き起こすアルコール成分を排除します。活性炭はすでに血液中に吸収されてしまったアルコール成分の排泄を促す効果もあるとされています。
◆点滴
静脈に点滴をすることで体内に吸収されたアルコールの血中濃度を低下させ、尿からの排泄を促します。低下した循環機能(血液の巡り)を補助する役割も果たし、体の回復能力をサポートすることになります。
犬がアルコールを摂取してはいけない理由
犬はアルコールの分解酵素を持っていない
人間でもアルコールに強い人と弱い人がいます。もともとアルコールを分解する酵素を持っていない、または酵素が少ない人は、どんなに飲む回数や量を増やしても、酔わなくなるわけではありません。
犬の場合は、犬種や体重、年齢に関係なく、そもそもアルコールを分解する酵素を持っていません。アルコールの量にかかわらず、口にしたアルコールは無毒化されることなく、そのまま急速に胃や腸で吸収されたあと長い時間体の中にとどまることに。結果、脳に影響を与え、心臓や肺、血管、肝臓、腎臓などの機能にも害を及ぼすことになります。
致死量の目安
犬がアルコールを誤飲した場合の危険量目安は以下のとおりです。
ただし、致死量以下なら大丈夫ということではありません。小型犬の場合はほんの少し舐めただけでも体調を崩す可能性があるので注意してください。
ビール(アルコール度数5%の場合)
犬の体重目安 | 致死量の目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 220ml~550ml |
中型(6~15kg) | 660ml~1650m |
大型(20~50kg) | 2.2L~5.5L |
日本酒、ワイン(アルコール度数15%の場合)
犬の体重目安 | 致死量の目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 74ml~185ml |
中型(6~15kg) | 222ml~83.25ml |
大型(20~50kg) | 740mlg~1850ml |
ウイスキー(アルコール度数40%の場合)
犬の体重目安 | 致死量の目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 28ml~70ml |
中型(6~15kg) | 84ml~210ml |
大型(20~50kg) | 280mlg~700ml |
犬のアルコール誤飲を防ぐ方法
また、アルコールの入っている消毒用ウェットティッシュやスプレー、犬にとっておいしそうな匂いのするマウスウォッシュにも注意が必要です。とくに、体や顔、足などを拭いたあとのウェットティッシュや布を噛んで遊んだりしないよう、ゴミの管理もしっかりしましょう。
犬にアルコール(お酒)は厳禁! 誤飲しないようくれぐれも注意を
最近は犬用ワインやビール、日本酒などが市販されています。いずれもノンアルコールで犬の健康に配慮した成分で作られているので、愛犬と一緒にお酒を飲んでいる気分を味わいたい場合は、そうした犬用の飲み物を用意しておくのもよいでしょう。
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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