犬が震えている姿を見たことはありませんか?犬の震えには心配しなくていいケースと、病気が疑われるケースがあるので、震える理由を知って適切に対処する必要があります。今回は、犬が震える理由や対処法、震えと痙攣(けいれん)の違いについて解説します。
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愛犬の震えの対応に悩んでいる飼い主さんの割合は?
いぬのきもちWEB MAGAZINEでは、犬の飼い主さん123名に「愛犬が震えていて対応に悩んだことはあるか」についてアンケートを実施しました。すると、約半数の飼い主さんが、愛犬の震えの対応に悩んだ経験があることがわかりました。
愛犬が震えたときに慌てないためにも、犬がなぜ震えるのか、そのときどのように対処すればいいのか、しっかり知識を深めておきたいですね。
心配のいらない犬が震える理由
まずは、生理的なものや感情的なものなど、特に心配のいらない理由からくる震えについて見ていきましょう。
寒さから震えている
犬は寒さを感じると、熱を発生させて体温を維持しようと、体中の筋肉を細かく動かし(震え)ます。寒さによる震えは体が温まると止みますが、震えが続く場合は保温や室内で暖をとるなどの対応をしてあげましょう。
不安・緊張・ストレスから震えている
犬は不安や緊張、ストレスや恐怖を感じたときなどに、体が小刻みに震えることがあります。たとえば、過去に「体の大きな犬に追いかけられた」など怖い体験をしていると、大きな犬を見かけただけで恐怖心から震えてしまうことがあるでしょう。
そのほか、花火や雷など大きな音が聞こえる、知らない人や正体不明なものを前にした、知らない場所に連れて行かれたなどのストレスがきっかけとなり震えることがあります。
興奮して震えている
久々に飼い主さんに会えてうれしいときや、天敵に遭遇してしまったときなど、感情が高ぶって興奮状態になったとき、まれに体がプルプルと震えることがあります。震えている状況はかなり興奮が高まっていることがうかがえます。さらに興奮させると吠えや噛みつきのきっかけとなることがありますから、速やかに興奮する対象から離れるなど落ち着くことができるように配慮してあげましょう。
老化による筋力低下で震えている
足腰など体の筋肉が衰えてきたシニア犬は踏ん張りがきかなくなるため、立ち上がったり踏ん張ったりした際に、後ろ足が震える「老齢性振戦」が見られる場合があります。排便時などいきむときに震えることもあるでしょう。
筋力低下とともに痛みが出ていることも少なくありませんので、受診することをおすすめします。また、愛犬の負担にならない範囲で散歩などの歩く運動を継続し、筋力維持を心がけることも大切です。
チワワはほかの犬種と比べて震えやすい
チワワといったらプルプル震える、というイメージをもつ人もいるように、チワワはほかの犬種と比べて震えやすいといわれています。チワワが震える理由としては、寒さに弱い犬種のため、震えることで体温調節をしている可能性があげられます。また、警戒心が強い傾向にあるため、何かを恐れて震えることも少なくないようです。興奮や緊張で震えることもあります。
詳しくは、以下の記事をチェックしてみてください。
緊急性の高い犬が震える理由
以下の理由からくる震えは、命にかかわる緊急性の高いものが多いので、動物病院を受診するなど早急な対応が必要です。
病気からくる震え
震えの症状が見られる病気には、以下のようなものが挙げられます。
脳障害
脳腫瘍、てんかん、脳炎、水頭症など、脳の機能障害により震えが見られることがあります。できるだけ早期に受診しましょう。
突発性頭部振戦
「ヘッドボンビングシンドローム」とも呼ばれる、頭の震えが症状として出る病気です。主に中型の洋犬が発症することが多いですが、原因はよくわかっておらず、遺伝が関係しているのではないかといわれています。何か別の動作をすると頭部の震えは止まるのが特徴です。気になる症状がある際は受診しましょう。
低血糖
何らかの原因で血糖値が低下すると、低血糖を起こして体が震えたり、意識障害を起こしたりすることがあります。糖尿病を患っている犬は、治療の際に用いられるインスリンの過剰投与によって低血糖状態に陥ることが。また、子犬の場合は、母犬や哺乳瓶からミルクがきちんと飲めていなかったり、食欲不振・嘔吐・下痢が続いたりすることで低血糖を起こす危険があります。血糖値が低くなりすぎると命にかかわるため、すぐに動物病院を受診しましょう。
臓器の機能障害
肝臓や腎臓などがうまく機能しなくなると、毒素が蓄積して、痙攣などの神経症状が起こる場合が。その前兆として、震えることがあります。震えのほかに、おしっこの状態や回数、体調や食欲などに変化を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
甲状腺機能の異常
まれなケースですが、老化などが原因で甲状腺の機能低下を招くことで、震えなどの症状が起きることがあります。
痛みからくる震え
ケガをしている場合のほかに、椎間板ヘルニアなどで背中や腰など体のどこかに痛みが生じている場合、震えることがあります。
動いたときにキャンと鳴く、動かずにブルブルと震えている、耳や尻尾を落として震えているなどの様子が見られる場合は、犬が痛みを感じている可能性が高いので、早めに動物病院を受診しましょう。
発熱からくる震え
感染症や熱中症などを起こしていると、体が発熱するとともに筋肉に震えが見られることがあります。発熱は体に異常が生じている証拠なので、耳を触ると熱い、呼吸が早いなどの症状が見られる場合は、動物病院を受診するようにしてください。
中毒症状からくる震え
犬の体に有害な物質が含まれたものを食べてしまうと、中毒症状を引き起こして、よだれや嘔吐などを伴う震えが見られる場合があります。
特に、人用の薬やニコチンが含まれるタバコ、カフェインが含まれるコーヒー、テオブロミンが含まれるチョコレート、キシリトールが含まれるガム、殺虫剤や除草剤などは犬にとって有害なので、犬の口に絶対に入らないよう、保管方法や取り扱いには細心の注意を払ってください。万が一食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診して体から有害物質を取り除いてもらいましょう。
犬が震える場合にすべき対処法
犬が震えているときは、まずは以下のような対処を行いましょう。
震えたときの様子を記録する
犬が震えているときは、震えが始まったときの状況や震えが続いた時間、震えた部位などをメモしておいたり、動画などで記録しておいたりすると、動物病院で相談しやすく、原因究明にも役立ちます。
部屋の温度・体温を上げる
寒さからくる震えの場合は、エアコンなどの暖房器具で室温を上げるのが効果的です。冬場は散歩の際に防寒着を着せたり、外出前に少し体を動かして温めておいたりするのもよいでしょう。
犬の嫌がるものを取り除く
不安や緊張、ストレスや恐怖などから震える場合は、その原因となるものを遠ざけると震えがおさまることがあります。花火など予定がわかっているものは事前準備をしておきましょう。たとえば窓を閉めたり、室内をにぎやかにしておいたりなどの対応もよいでしょう。また、愛犬が苦手なものを把握して、事前に回避することもおすすめです。
ふだんと違う様子が見られたら動物病院を受診する
事故やケガをしたあとに震えている、誤飲のあとに震えが始まったなど、明確な原因がある場合だけでなく、「寒い・痛い・怖い」などの原因がないのに震えがどんどんひどくなる、ぐったりとしている、息が荒くなる、嘔吐・下痢がある、意識がもうろうとしているなど、ふだんと違う様子が見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
震えと痙攣の違いは?
震えと似た症状として、病気やてんかん発作を起こしたときなどに見られる痙攣があります。どちらも体をブルブルと震わす動きをするため、ぱっと見ただけでは判断が難しいかもしれませんが、震え方や震えているときの犬の様子には違いが見られます。
震えと痙攣のそれぞれの特徴
前述したように、犬の体の震えは痛みや恐怖、寒さなどさまざまな理由で引き起こされますが、断続的もしくは時々思い出したかのように震えだすことはあるものの、継続することは少なく、意識を失ったり、泡をふいたりすることもあまりありません。震えがなかなか止まらない、頻繁に繰り返すなど病気が疑われる症状が見られなければ、基本的に心配はいらないでしょう。
一方、痙攣は、全身や一部の筋肉が激しく収縮することで、短くて数秒~1分、長くて3分程度の間、自分の意思とは関係なく体が震える状態のことをいいます。
痙攣が起きたときの症状はさまざまで、前足や顔面などの体の一部が一定のリズムで動く・発作直後は呼吸が荒いもののしばらくするとケロッとしているなどの比較的軽い症状から、全身を硬直させてガクガクと震える・犬かきするように足をバタバタとさせる・意識がもうろうとする・嘔吐や失禁・よだれが大量に出る・口や目を大きく開けて呼吸が数秒止まるといった、激しい症状が見られることもあります。
短い痙攣によって死に至るケースはあまりありませんが、こういった症状が見られたら、動物病院を受診することをおすすめします。特に痙攣が3分以上続いたり、短い痙攣であっても何度も繰り返したりする場合や、愛犬の意識がない、呼吸をしていないなどの様子が見られる場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院へ連絡するようにしてください。
痙攣が起きたときはどうすればいい?
痙攣は犬自身にもコントロールできないものなので、止めようと無理に押さえつけたり、体を起こそうとしたり、大きな声で名前を呼んだりして刺激を与えることはNGです。静かに観察しながら、愛犬の様子が落ち着くのを待ちましょう。なお、痙攣中は触ろうとして手を近づけると噛まれるおそれがあります。痙攣がおさまるまでは、愛犬には触らずに見守ってあげてください。
その際、愛犬がまわりの固いものに体をぶつけたり、階段などから転落したりしないよう、周囲のぶつかりそうなものを片づけたり、階段や段差がある場所のドアを閉めたりして安全を確保してください。また、痙攣の様子を撮影やメモしておくことも大切です。
痙攣が落ち着いたあとの対処法
愛犬の状態が落ち着いたら、つけている首輪やリードを外し、嘔吐物やよだれなど口まわりについているものをふいてあげましょう。しばらくたっても意識がもうろうとしていたり、ぐったりしていたりする場合や、短時間で痙攣を繰り返す場合は、すぐに動物病院を受診してください。
犬の痙攣については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
愛犬の様子をふだんから観察しておこう!
犬が震えるのは、生理的なものから病気が原因になっているものまでさまざまな理由があります。それぞれの症状や震えにも、程度や頻度により受診・治療、対処法は異なります。また、個々によっても変わります。少しでも気になる症状があれば、動物病院を受診してください。
以下の記事でも、震えの原因について解説していますので、参考にしてみてください。
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/宮下早希
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。