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【獣医師監修】犬にパプリカを与えても大丈夫。パプリカを食べるメリットと与え方を解説

パプリカは犬に与えても大丈夫です。「関節炎の犬にはNG」という情報もありますが、いまのところパプリカで関節炎を発症した、悪化したという研究発表はありません。食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富なパプリカを犬に与えたときのメリットと与える際の注意点について紹介します。

佐野 忠士 先生

犬は適量ならパプリカを食べても大丈夫

庭園のパプリカ
Kwangmoozaa/gettyimages
パプリカは犬が食べてもよい野菜のひとつです。

パプリカは、ピーマンと同じナス科トウガラシ属の植物です。赤や黄色、オレンジのカラーピーマンは、緑色のピーマンの実が完熟すると色づくもので、緑色のピーマンより果肉が厚めです。
それに対してパプリカは、ピーマンの大型種で、ピーマンの果肉に比べてずっと肉厚で甘味があります。

栄養成分から見ると、パプリカはピーマン同様に食物繊維やβカロテン、ビタミンC、カリウムなどの栄養素が豊富ですが、βカロテンとビタミンCはいずれもピーマンに比べて2倍以上を含んでいます。それらの栄養成分は、犬の体調を整え、健康を維持するのに役立つものなので、愛犬の食生活に取り入れるのもよいでしょう。
ピーマンの情報については以下の記事を参照してください。

パプリカのおもな栄養素|食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富

芝生の庭に立って、舌を出してカメラを見つめる茶色いポメラニアンの顔アップ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
パプリカに含まれるおもな栄養素 ※数値は可食部100gに含まれる成分

エネルギー28kal
水分91.1g
タンパク質1.0g
脂質0.2g
炭水化物7.2g
灰分(無機質)0.5g

文部科学省「食品データベース」https://fooddb.mext.go.jp/index.plより参照

犬がパプリカを食べるメリット|便秘の解消とアンチエイジング、血圧上昇の防止も

赤と緑の布製のおもちゃを噛んで話さず、カメラを睨む黒いフレンチ・ブルドッグ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
パプリカに含まれる栄養成分のなかから、犬の健康維持に役立つ代表的なものと、その役割を紹介します。

食物繊維|便秘の解消、デトックス

食物繊維には、水に溶ける性質の「水溶性食物繊維」と、水に溶けない性質の「不溶性食物繊維」の2種類があります。
水溶性食物繊維の働きは、糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値の急上昇を抑えることと、コレステロールを体外に出すこと。
不溶性食物繊維には、腸の中で水分を吸って大きく膨らみ、便の量を増やすことで腸を刺激し、排便を促す働きがあります。さらに、不溶性食物繊維には腸内の毒素やコレステロールを体外に排出する作用があります。

パプリカには、これら2種類の食物繊維が含まれていますが、不溶性のほうが多く、水溶性の約2倍の量が含まれます。そのため、腸内細菌の栄養になり、腸の機能の改善、便秘の解消やデトックス、病気の予防に役立つと考えられます。

βカロテン|健康な皮膚や被毛、粘膜、歯をつくる

βカロテンは、犬の体内で必要な分だけのビタミンAに変換され、愛犬の健康維持に役立ってくれる栄養素です。

ビタミンAは、犬の皮膚や被毛を健康な状態に保ったり、丈夫な粘膜や歯をつくったりするのに役立つ栄養素です。さらに、人の場合は夜間の視力の維持を助けるといわれていますが、犬の場合も同じかどうかはわかりません。
また、βカロテンはビタミンAに変換されて働くだけではなく、それ自体が強い抗酸化作用を持っているので、体内に発生した有害な活性酸素を除去し、老化を防いでくれる効果も期待できます。

ちなみに、パプリカは緑色のピーマンの大型種ですが、ピーマンと比べるとβカロテンの含有量は2倍以上もあります。

ビタミンC|コラーゲンの合成、抗酸化作用で病気予防

ビタミンCは、タンパク質からコラーゲンを合成するのをサポートしたり、毛細血管や歯・骨の健康を保ったりする働きがあります。ほかにも、鉄分の吸収促進、解毒やホルモン代謝のサポート、強い抗酸化作用による病気予防や老化抑止など、さまざまに役立ってくれます。

パプリカに含まれるビタミンCは、ピーマンの約2.2倍。トマトと比べると約11倍、レモンと比較しても約1.7倍と、ひじょうに豊富なビタミンCを含んでいます。

なお、犬は体内でビタミンCを合成することができるため、長く「犬にビタミン摂取は不要」と考えられてきました。しかし、最近の研究結果から犬にも「ビタミンC欠乏症」があることがわかってきました。5歳を過ぎる頃からビタミンCの合成能力が衰え始めるとも考えられるので、食べ物やサプリメントからビタミンCの補給を図るとよいかもしれません。

カリウム|余分な塩分を排出して高血圧を予防、ただし腎臓病には注意

カリウムは細胞を正常な状態に保ち、体液の浸透圧を調整する役割を果たすミネラルの一種です。体内に溜まった塩分を尿と一緒に体外に排出することで、血圧を下げる作用もあります。

ただし、高齢で腎臓機能が低くなっている犬や腎臓病を患っている犬の場合は、カリウムの摂取量には注意が必要です。腎臓の働きが低下すると、カリウムが十分に尿に排出されず、体内に蓄積されて血液中のカリウム濃度が高まる「高カリウム血症」になることがあります。
「高カリウム血症」になると、四肢の痺れや筋肉の衰え、けいれん、不整脈や頻脈など起こり、最悪の場合は突然死することもあります。腎臓が弱っているシニア犬や腎臓病のある犬、心臓病を患っている犬には、パプリカを与える前にかかりつけの獣医師に相談してください。

「関節炎の犬にはNG」って本当?

「パプリカは関節炎の原因になる」「パプリカは関節炎を悪化させる」といった情報を目にすることがあるかもしれません。
これは、ナス科の植物に「アルカロイド」という苦味成分が含まれていることが理由だと思われます。

ナス科の植物には、パプリカのほかにピーマン、トマト、シシトウ、ナスなどがあります。これらナス科の野菜に含まれる「アルカロイド」は、犬が大量に摂取すると中毒症状(嘔吐、下痢、けいれんなど)を起こす可能性があります。
ただし、いずれの野菜も大量に摂取しない限り、中毒になる心配はありません。犬が大量にパプリカを食べる可能性は極めて低いので、アルカロイドについて心配はいらないでしょう。

なお、パプリカによって関節炎を発症、関節炎が悪化したという研究結果は、いまのところ発表されていません。

犬にパプリカを与えるときの注意ポイント|ヘタと種は取り除き、生より加熱がベター

絨毯の上に立って、少し首を傾げてカメラを見つめる茶色のトイ・プードル
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
ピーマンに比べると大きく肉厚で、果肉が固いパプリカ。愛犬に与えるときの注意点を紹介します。

与えてよい部位

パプリカには大きく太いヘタがついています。また、果肉の中には種もたくさん入っています。これらは犬にとって消化が悪く、飲み込んだときに喉に引っかかる心配もあります。犬に与えるときは、必ずヘタと種を取り除いてください。

与えるときの適量

犬にパプリカを与える場合は、体重に合わせて以下の量を目安にしてください。ただし、あくまでもカロリー上の算出値なので、主食(総合栄養食)の摂取を阻害しない量にとどめることが大切です。

犬の体重目安1日あたりの摂取可能目安
小型(2~5kg)67g~134g(1.5個~1個)
中型(6~15kg)153g~305g(1.3個~2.5個)
大型(20~50kg)378g~752g(3個~5個)

※数値は、避妊・去勢済みの犬で体重相応のおやつ(1日の総摂取カロリー目安の1割)として算出

調理方法

パプリカは、犬が生で食べても健康を損ねる心配はあまりありませんが、肉厚なので加熱したほうが繊維が柔らかくなって、小型犬でも食べやすくなります。茹でる、蒸す、電子レンジで加熱するなどして、細かく刻んでドッグフードにトッピングしたり、おやつに与えたりするのがおすすめです。

タンパク質がアレルギー症状を引き起こすことも

パプリカには、少量ですがタンパク質が含まれています。食物アレルギーは、食品に含まれるタンパク質に免疫機能が過剰に反応することで起こるので、稀にパプリカでアレルギー症状をきたす犬がいます。犬に初めてパプリカを与えるときは、少し食べさせて様子を見てみましょう。食後に皮膚の痒み、湿疹、下痢、嘔吐などが起こらないようなら、食事やおやつに取り入れてみるのもよいかもしれません。

パプリカは犬が食べても大丈夫。ただし、腎臓病がある場合は注意して

食物繊維やビタミン、ミネラルを多く含むパプリカは、適量であれば犬の食生活に取り入れてもよい野菜のひとつです。与える量を守って、賢く愛犬の健康に役立てましょう。
犬には与えてはいけない食べ物や、注意したい食べ物があります。確認しておきましょう。
監修/佐野忠士先生(酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授)
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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