犬が吠えるのにはさまざまな理由があります。成長してから、年老いてから吠えるようになることも。そこで今回は、犬が吠える理由や対処法を、状況・年代別に解説。犬が吠えにくくなるしつけ・お世話のポイントやNG行動、犬の吠えに関するQ&Aもご紹介します。
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【状況別】犬が吠える理由と対処法
飼い主さんの外出時やゴハンの前などに吠えるのは「要求吠え」
飼い主さんが出かけるときや、ゴハンの前になると犬が吠えるのは、自分の要求を通そうとしているのでしょう。この場合、飼い主さんに戻ってきてほしい、早くゴハンがほしいなどの気持ちから吠えていると考えられます。
「要求吠え」の対処法
要求吠えの対処で大切なのが、おねだりの成功経験を積ませないこと。飼い主さんが犬のおねだりにいつも応えてしまうと、犬は「吠える=要求を通してもらえる」と覚え、ますます要求吠えをするようになるので、吠えても要求は通らないと理解させましょう。
飼い主さんの外出時に吠える場合
犬は不安やさみしい気持ちから、吠えて飼い主さんを呼び戻そうとしています。この場合、犬が吠えても戻らない、また、外出する気配を犬に感じさせないように外に出ることを徹底してください。
ゴハンの前になると吠える場合
吠えている間はゴハンをおあずけにし、犬が吠えやんでしばらく経ったらゴハンを与えるようにしましょう。また、毎日決まった時間にゴハンを与えていると、犬はその時間を覚えて吠えるようになることがあるので、ゴハンの時間をランダムにするのもひとつの手です。
来客やチャイム音、物音、散歩中などに吠えるのは「警戒吠え」
犬は自分のテリトリーを脅かす存在や気配に敏感のため、警戒心や恐怖心から、威嚇の意味で吠えることがあります。来客やチャイム音、外から聞こえる物音などに対して吠えるのは、それらに対する警戒心や恐怖心が原因でしょう。また、散歩中に見知らぬ人や犬、自転車などの乗り物に吠える場合も同様です。
「警戒吠え」の対処法
警戒吠えの対処法では、犬が警戒する対象に慣れさせること、また、回避してあげることがポイントです。
来客やチャイム音に吠える場合
友人や親族などを自宅に頻繁に招いて、来客やチャイム音が特別なものではないと認識させましょう。その際、チャイム音が鳴ったときに飼い主さんが大声を出したり、バタバタしたりすると、犬がそれを見て興奮する場合があるので、なるべく落ち着いて対応することも大切です。
また、チャイム音が鳴ると来客が帰るまでずっと吠え続けるような場合は、チャイムの音を変えるなど、生活環境を見直すことで効果が出ることも。犬が来客やチャイム音に吠えるときの対処法は状況などによっても異なるので、以下の記事もあわせて参考にしてください。
外から聞こえる物音に吠える場合
窓を開けるなどして日ごろからさまざまな生活音を聞かせ、外からの大きな音や物音に慣れさせましょう。それが難しい場合は、外の音が聞こえにくい部屋に移動させたり、遮音カーテンなどを活用して、外の音が聞こえにくい環境を作ったりするのも一案です。
散歩中に吠える場合
散歩時に見知らぬ人や犬、自転車などにすれ違う機会をあえて増やして、徐々に警戒心を解いてあげましょう。最初のうちは、すれ違うときに「アイコンタクト」などの指示を出して飼い主さんに意識を向けさせ、吠えなかった場合は、ごほうびとしておやつを与えることを繰り返します。徐々に人や犬、自転車などとすれ違う距離を近づけ、吠えにくくなったら、交通量の多い道を歩かせる練習をしてみてください。
なお、どうしてもほかの犬が苦手という場合は、ほかの犬が来たら吠える前に回避し、ほかの犬に吠えるという体験をさせないようにしましょう。ほかの犬がいない時間帯やコースを散歩することもおすすめです。
アイコンタクトの教え方は以下の記事を参考にしてみてください。
飼い主さんの帰宅時や遊んでいるときに吠えるのは「興奮吠え」
犬は大好きな飼い主さんが帰宅したり、一緒に遊んでいて楽しくなったりすると、興奮して吠えることがあります。落ち着かせようと声をかけてしまうと、余計に興奮して吠え声が大きくなることがあるので注意しましょう。
「興奮吠え」の対処法
犬が興奮吠えするときは、落ち着くまでそっとしておくことがポイントです。
飼い主さんの帰宅時や遊んでいるときに吠える場合
飼い主さんの帰宅時や遊んでいる最中に、興奮して吠えたり飛びついたりする場合は、興奮が落ち着くまでかまうのをやめて無視しましょう。吠えるのをやめてからかまうことを徹底することで、犬は「吠えないほうがかまってもらえる」と理解し、吠えにくくなります。
ちなみに、散歩が好きな犬だと、飼い主さんがリードを持つだけで散歩に行けると思い、興奮して吠えることが。この場合は、リードを持っても外には出かけないなど、「リードを持つ=散歩」というパターンを固定させないようするといいでしょう。
【年代別】犬が吠える理由と対処法
子犬が吠える理由と対処法
不安やさみしさから吠える(鳴く)場合
新しい環境に迎えて数週間は、子犬にとってとくに不安を感じやすい時期。そのため、子犬はさみしさから夜にキューンなどと鳴いてしまうことがあります。
この場合、子犬が安心できる環境を整えてあげることが大切です。「かわいそうだから」と様子を見に行ったり、クレートから出したりしてしまうと、子犬は「吠えれば飼い主さんにかまってもらえる」と覚え、余計に吠えるようになることがあるので、夜に鳴いても極力かまわないようにしましょう。
おねだりする気持ちから吠える(鳴く)場合
子犬はキュンキュン鳴いて、食べ物や遊びなどのおねだりをすることがあります。「かわいいから」とおねだりに応えてしまうと、一生ねだられ続けることになるので、子犬がおねだりで鳴いたり吠えたりしているときは目を合わせず、無視するようにしましょう。
そして、子犬が吠えなくなったら落ち着いた声でクールにほめ、「吠えても意味がない」ことを教えてあげてください。
興奮から吠える場合
子犬は自分の感情をどう制御すればいいかがまだわかっていないので、興奮しやすい時期でもあります。子犬が興奮して吠える場合は、「オスワリ」などの指示を出して落ち着かせましょう。「オスワリ」のしつけについては、後ほど詳しく解説します。
成犬が吠える理由と対処法
嫌なことから逃げたい気持ちから吠える場合
成犬期の犬は、体に触れられたくない・サークルから出してほしいなど、嫌なことから解放されたくて吠えることがあります。
この場合は、先ほどご紹介した要求吠えの対処法と同様、吠えているときは要求に応えないことが大切です。「吠えても要求は通らない」としっかりと教えましょう。
知らないものへの警戒心から吠える場合
成犬になると、家の中の環境には慣れる一方で、正体不明のものへの警戒心は強くなっていきます。そのため、知らない人や犬、聞きなれない音に警戒して吠えるようになることが。
この場合、先述した警戒吠えの対策を取り入れてみましょう。なお、来客に対して吠えるときは、お客さんにおやつを与えてもらい、「来客=おいしいものをくれる人」と教えると、吠えにくくなることも。
ストレスから吠える場合
犬の成長が落ち着いてしばらく経つと、自然とコミュニケーションの時間が減りがちに。犬は飼い主さんとのコミュニケーションが不足すると、ストレスが原因で吠えるようになってしまうことがあるので注意しましょう。
この場合、犬のストレスを発散させることが、吠え防止につながります。例えば、新しいトレーニングに挑戦するなどして、犬とのコミュニケーションの時間を増やすのがおすすめ。また、犬は成長に応じで体力がアップするので、これまで以上に散歩や運動の時間を増やすのもいい方法です。
老犬が吠える理由と対処法
痛みから吠える場合
これまで飼い主さんに触られても平気だった犬が、シニア期に入ってから体に触ろうとしたり、抱っこしようとしたりしたときに吠えるようになったのなら、病気やケガが原因かもしれません。
ふだんの様子に変わりがないか毎日チェックするのはもちろん、1年に2回くらいの頻度で健康診断を受け、なるべく早く体調の異変に気付けるようにしましょう。
認知症から吠える場合
年を重ねると認知機能に障害が出て、夜鳴きや遠吠えをすることがあります。認知症が疑われる場合は必ず獣医師に診てもらうようにしましょう。犬の認知症については、以下の記事を参考にしてみてください。
犬が吠えにくくなるしつけやお世話のポイント
子犬の頃から社会化しつけを取り入れる
見知らぬ人や犬、音など、犬を取り巻くあらゆる刺激に慣れさせるのが「社会化しつけ」です。「社会化しつけ」がしっかりとできていれば、犬は警戒心やストレスを感じにくくなるため、吠え対策にも効果的とされています。
順応性が高い子犬のうちに「社会化しつけ」を行うのがベストなので、犬を飼い始めたら早めに取り組むようにしましょう。詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
クレートを落ち着く空間だと認識させる(「ハウス」を教える)
要求吠えや興奮吠えをしている(しそうな)ときに、「ハウス」の指示などを出して犬をクレートの中に入れてあげれば、吠えにくくなることがあります。そのためにも、ふだんからクレートの中に入って落ち着いて過ごす習慣をつけ、「クレート=落ち着ける場所」と教えてあげましょう。
「ハウス」の教え方については、以下の記事を参考にしてみてください。
十分な運動やコミュニケーションを欠かさない
先述のとおり、犬は運動やコミュニケーションが足りていないとストレスがたまり、吠えやすくなります。散歩が好きな犬なら、1日2回以上散歩に連れて行くことで、外のニオイや風景に刺激を受けてリフレッシュできるため、吠えにくくなることが。
また、散歩ルートを変えるたけでも、いつもと違った外の刺激を受けられるようになるので、より効果的にストレスを発散させることができます。散歩が苦手な犬の場合は、室内遊びの時間を充実させてあげるといいでしょう。
犬を落ち着かせる「オスワリ」や「マテ」「オイデ」を教える
「オスワリ」や「マテ」「オイデ」など、飼い主さんの指示で落ち着けるようになれば、吠えはもちろん、それ以外の行動もコントロールしやすくなります。以下の記事では、犬を落ち着かせるしつけの教え方をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
犬が吠えたときにやってはいけない間違った対処法
体罰を与えたり叱ったりする
飼い主さんのなかには、愛犬が吠えたら「マズルをつかむ」「体を軽くたたく」などの対応をしているかたもいるかもしれませんが、これらの対応は「体罰」にあたるため絶対にやめてください。
また、言葉が通じない犬を叱ったところで、飼い主さんが怒っているのは通じたとしても、「なぜ叱られたか」までは正しく伝わりません。叱ることで吠えが悪化することもあるので、吠えた犬を叱るのはやめましょう。
声やしぐさで反応する
吠えるのをやめさせるために、手をかざしたり声をかけたりするのは逆効果。吠えることに対して人が何かしらの反応をしてしまうと、犬は「相手をしてくれた」と勘違いし、余計に興奮して吠えるようになってしまいます。
繰り返しになりますが、病気や痛みが原因でない限り、犬が吠えるときは相手にしないのがもっとも効果的です。ただし、犬が理解するまで時間がかかるので、徹底しきれない飼い主さんが多いのも事実です。覚悟を決めて気長に取り組んでください
犬が吠える理由に関するQ&Aまとめ
いぬのきもちWEBMAGAZINEには、犬の吠えについて以下のような質問が寄せられています。気になるかたはあわせて参考にしてみてください。
ドッグランでほかの犬を追いかけて吠えてしまいます。なぜでしょうか?
生後3か月の愛犬が夜鳴きをするのですが、いつまで続くものでしょうか?
散歩中に会う犬に、吠える場合と吠えない場合があるのはなぜでしょうか?
最近夜中に吠えるようになったのですが、何か理由があるのでしょうか?
犬が吠えるのには理由がある! 吠えるときの犬の気持ちを考えてみよう
言葉が話せない犬にとって、吠えることは意思表示のための大事な手段。吠えるのには何かしら理由があるので、犬がどんなときに吠えるのかきちんと理解し、正しく対処してあげることが大切です。
犬の吠えについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
参考/「いぬのきもち」2015年12月号『愛犬を一生ムダ吠えしない犬にする10の育て方』
「いぬのきもち」2016年4月号『困りごと解決のヒントに!犬のアタマの中をのぞいたら吠え・噛みの理由がわかった』
「いぬのきもち」2017年3月号『1才までに「計画完了」を目指して 吠えない犬育成計画』
「いぬのきもち」2018年4月号『年代別 愛犬の吠えに一生困らないための 吠え方略ガイド』
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。