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【獣医師監修】犬が遠吠えする理由 鳴き声や疑問、やめさせ方を紹介
愛犬が突然「ワオーン」と、遠吠えをすることはありませんか? 今回は、犬が遠吠えする理由や「赤ちゃんが泣くと反応する?」「一生遠吠えしない犬もいる?」などの疑問、遠吠えの解消法を紹介します。遠吠えで悩んでいる人は、できることから対策しましょう。
遠吠えの鳴き声
遠吠えはふだんの鳴き方と違い、犬が「ワォーン」や「クォーン」のように鳴きます。犬の祖先とされるオオカミは離れた場所にいる仲間へ自分の居場所を伝えるため、遠吠えをする傾向があるのです。
では、人との生活に適応していった犬たちは、なぜ遠吠えをするのでしょう。その理由は、次の章で詳しく紹介します。
犬が遠吠えする理由
コミュニケーションしているから
先述したように、犬の祖先であるオオカミ(狼)は、仲間とコミュニケーションするために遠吠えをしていました。そのコミュニケーションには、次のような理由があるといわれています。
- 自分の縄張りを主張し、むやみに入ってこさせないようにする
- 群れからはぐれてしまった仲間を見つける(居場所を知らせる)
- 仲間とのコミュニケーション手段 など
オオカミが遠吠えをする理由は犬にも引き継がれているといわれ、とくに「仲間に自分の居場所を知らせる」「コミュニケーション手段」としての遠吠えは、現代の犬にもよく見られるようです。
例えば、何も聞こえないのに、犬が窓の外を見て突然遠吠えを始めるようなことがありますよね。このとき犬は、犬にしか聞こえない遠くの遠吠えをキャッチし、ほかの犬とコミュニケーションを取ろうとしているのではないかと考えられています。
ストレスを感じているから
遊ぶ時間や運動時間が足りないなど、犬のストレスの原因はさまざまですが、「犬はストレスを感じると遠吠えをする」という説があります。この考えは、遠吠えをすることによって大きな声を出し、モヤモヤとした気持ちを発散させているというものです。
ただ、遠吠えしたからと言ってストレスがスッキリ解消するとは言えませんので、愛犬のストレスをできるだけ減らす工夫や対応をしてあげるのが大事です。
寂しいから
ストレス解消の遠吠えに関連しますが、犬は寂しさを感じているときにも遠吠えをするといわれています。とくに飼い主さんが出かけてしまった留守番中に、寂しさを紛らわせるために遠吠えをするケースが多いようです。
また、留守番中に遠吠え以外にも問題行動が見られるなら「分離不安症」という心の病気も疑われます。分離不安症とは、犬が飼い主さんから離れたときに過度に不安を感じ、問題行動や体調不良を起こす病気のことです。
この病気の犬は、飼い主さんがいなくなると不安で声が枯れるほど吠え続けたり、遠吠えをずっと繰り返したりするようになることがあります。また、粗相をしたり、家具を壊したりするなどの問題行動が同時に見られる場合もあります。
なお、分離不安症の際には、吠えや家具を壊すなどの問題行動だけでなく、不安感から嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす場合もあります。また、不安感を紛らすために、皮膚を舐め続ける行動・尾を追う行動・穴掘り行動・ぐるぐると歩き回る行動など、同じ仕草を長時間繰り返してしまう行動(常同行動)をするようになる場合もあり、常同行動に伴う皮膚炎や怪我などで身体を傷めてしまうることもあるため、注意が必要です。愛犬の不穏な行動や健康上の変化に気が付いたときは一度かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
サイレンや雷に反応しているから
救急車やパトカーなどのサイレンに反応して、遠吠えをすることもあります。これは、サイレンの音が遠吠えの周波数と似ているためだと考えられていて、サイレンの音をほかの犬の遠吠えと勘違いしている可能性が高いといえるでしょう。
一方、雷が鳴ると急に落ち着きをなくし、遠吠えを始める犬もいます。これは犬の野生的な本能に関係し、雷が鳴ることで生命の危険を直感的に察知しているのが原因だと考えられています。
認知症だから
犬も人と同じく「認知症(認知機能障害)」になることがわかっています。近年は犬も高齢化が進み、11才~15才ごろ(早いケースでは7才ごろ)から認知症の症状が出やすくなるといわれているので注意しましょう。どの犬種でも認知症の発症リスクはありますが、とくに柴犬などの日本犬に多いことがわかっています。
認知症になると夜中に遠吠え(夜鳴き)する行動以外にも、徘徊や昼夜逆転の生活、自分で方向転換をしにくくなる、名前を呼んだり、優しい言葉をかけたりなど愛犬が喜びそうな声掛けをしても反応が少ない、トイレがうまくできなくなるなどの症状が見られます。気になる症状が見られたら、まずはかかりつけの動物病院に相談してください。
遠吠えの疑問
上記に挙げた理由のほかにも、次のようなことをきっかけに遠吠えをすることがあります。
赤ちゃんが泣いたときに遠吠えするのはなぜ?
犬は、周波数が高い音や低い音に敏感に反応します。それは、野生の犬にとってこれらの音が自然災害を意味するものであり、獲物となる動物の鳴き声や仲間の遠吠えでもあったからです。
子どもの声や車のクラクションは周波数が高いため、犬が反応してしまうのは仕方のないことでしょう。
眠っているときにも遠吠えする?
犬が深く眠っているときには、起きているときのように吠えたり鳴いたりすることはありません。ただ、犬も浅い眠りの際には人と同じように夢を見ることがわかっていて、夢を見ているタイミングでは、寝言も言うと考えられています。だから愛犬が眠っている最中に遠吠えをしていたら、夢の中で何かに思いっきり吠えているのかもしれません。
遠吠えしない犬は、一生吠えない?
犬種やしつけによる吠えにくさがあるかもしれませんが、先述したように遠吠えの理由としてストレスや認知症があげられているため、「いま遠吠えしない犬が一生遠吠えしない」とはいえないでしょう。生活環境の変化や加齢により、急に遠吠えし始める可能性も否定できません。
犬の遠吠えをやめさせる方法
犬の遠吠えをやめさせるには「なぜ遠吠えをするのか」というところに重点を置いて考えていくことが大切です。ここでは、遠吠えをする理由別に対策を紹介します。
ストレスや寂しさが原因の場合
ストレスや寂しさが原因の遠吠えの場合は、その原因を取り除いてあげることが有効な対策となります。運動不足の場合は、散歩の時間や室内遊びの時間を増やしてあげましょう。なお、遊び時間は、1日1回長時間遊ぶよりも、1回の遊び時間は短時間でも1日に何度もこまめに遊ぶ時間を作ってあげる方が、満足度が高まりやすくお勧めです。
また、留守番中に寂しくならないよう、留守番前に散歩に行ったり、留守番中に安全に遊べるおもちゃを与えたりするなど工夫をすることが大切です。
本能的な場合
コミュニケーションとしての遠吠えなど、遠吠えの理由が本能的なものの場合、飼い主さんがコントロールするのはなかなか難しいでしょう。しかし、遠吠えを始めたらおもちゃで気を引くなどを繰り返すことで、ある程度吠えないことを学習してくれる犬もいます。この場合、犬が遠吠えをやめたら、思い切りほめてあげましょう。
また本能的な遠吠えのきっかけとして、特定の音の刺激などに反応しているケースの場合もあります。住環境が外の音の刺激を受けやすかったり、犬自身の気質が繊細で元々音の刺激を受けやすいなどの事情がある際には、壁や窓などに防音製品を設置して音を遮る工夫をしたり、また室内に小さな音でラジオやテレビなどをBGMのように流して、愛犬が吠えるきっかけになる音の刺激を感じにくくするなどの工夫をするのもひとつです。
病気が原因の場合
認知症が原因だと夜間に遠吠えをすることが多いため、飼い主さんは眠ることができず生活に支障が出ることもあります。しかし、犬を叱ってしつけるということはもちろんしてはいけませんし、効果もありません。犬が安心して眠れるよう動物病院でサプリメントや薬を処方してくれる場合もありますので、気になるようなら、まずは獣医師に相談してみましょう。
また分離不安症の場合は、獣医師に相談しながら環境を整えたり、主治医の指導の下で愛犬との接し方を見直したり、投薬をしたりすることで治療することが大切です。
犬が遠吠えをするのには、さまざまな理由があります。本能的なものでない限りは、愛犬が遠吠えをしている理由を探り、解決するよう心がけましょう。
参考/「いぬのきもち」2019年11月号『犬も夢を見る!? 歯ぎしりする!? 意外と知らない犬の体のことがわかる! 人の生理現象って犬にもあるの?』
監修/玉原智史先生(ひろ中央動物病院院長)
文/小崎華
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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