ドッグフードにはさまざまな種類がありますが、「療法食」とはどのようなものなのでしょうか。今回は、療法食の目的や種類、選ぶ(与える)際の注意点を解説します。また、療法食を食べないときの対処法や切り替え方もご紹介するので、参考にしてください。
「療法食」とは?
「療法食」とは?
「療法食」とは、特定の病気や健康状態に対応するために、特別に栄養バランスが調整されたドッグフードのことで、獣医師の指導のもとで与える必要があるもののことです。
愛犬が病気になってしまったら、症状に応じて特定の栄養素を増やしたり減らしたりするなどして、それまでと食事の内容を変える必要が出てくることがあります。また、治療のために食事管理が欠かせない病気もあります。
しかし、飼い主さんが愛犬の病気に合わせた食事を毎日手作りするのは、かなりの負担となりますし、栄養バランスを整えた食事を作るのはほとんど不可能と言えます。飼い主さんの負担を減らし、正しく栄養バランスをコントロールするために、病気の種類や症状に合わせたさまざまな療法食が用意されているのです。
健康な犬の主食には「総合栄養食」のドッグフードを
ドッグフードには、「療法食」以外にも、「総合栄養食」や「間食」「その他の目的食」などがありますが、健康な犬の主食には、「総合栄養食」のドッグフードを与えるのが基本です。「総合栄養食」とは、適量の新鮮な水とともに与えていれば必要な栄養素を摂取できるように、栄養バランスが整えられたドッグフードのことで、年齢などに合わせて、栄養基準が設けられています。
「療法食」の主な種類
前述通り、「療法食」と一口にいっても、病気や症状によって与えるものが異なります。ここでは、主な「療法食」の種類をご紹介します。
「消化器疾患」の治療に用いる「療法食」
消化器疾患の「療法食」は、主に次のようなものに配慮されています。
・高消化率(低脂肪を含む)
・食物アレルギーの配慮
・高食物繊維
これらのものを使い分けていきますが、症状や病気によって与えるタイプが異なるので、与える際は注意が必要です。
「腎臓疾患」の治療に用いる「療法食」
腎臓疾患の「療法食」は、血液中に老廃物が増えるのを防ぎ、病気を進行させないようにするため、リンやタンパク質などが制限されています。
「心臓疾患」の治療に用いる「療法食」
心臓疾患の「療法食」では、ナトリウムの量が制限されています。ただし、心臓疾患の進行度合いや使用する薬の種類によって適切なナトリウム量は異なるため、自分で判断せずに必ず獣医師に相談して下さい。
「アレルギー」の治療に用いる「療法食」
食物アレルギーの「療法食」には、体がアレルゲンと認識できないほどに加水分解したたんぱく質や、これまでに食べたことのないたんぱく質などが使用されています。また、「療法食」を与えるときは、獣医師の許可があるまでほかの食べ物を一切与えないのが重要です。
「尿路結石症」の治療に用いる「療法食」
ストルバイト結石症やシュウ酸カルシウム結石症などに対応した「療法食」では、マグネシウムやカルシウム、ナトリウムなどのミネラルの含有量が調整されています。また、「療法食」を与えている間は、ほかの食べ物を与えないよう注意する必要があります。
どの「療法食」も、メーカーによって成分やその割合などに違いがあります。また、疾患の状態などによって、栄養管理の内容が変更されることもあるのです。自己判断せず、獣医師の指示に従いながら、適切に与えましょう。
「療法食」を選ぶ際の注意点とは
繰り返しになりますが、「療法食」は、特定の病気や健康状態に応じて栄養バランスが整えられた特別なドッグフードです。そのため、「愛犬の胃腸の調子が悪いから」「ちょっと太ってきたから」など、飼い主さんの自己判断で与えないでください。
また、「療法食」の中には、短期間の治療に用いるために、極端な栄養バランスに調整されたものもありますし、愛犬の状態も変わってきますのでそれに応じて「療法食」の変更が必要となる場合もあります。継続して使用する場合も、定期的に獣医師の診察を受けることが大切です。
「療法食」は、あくまで獣医師の指導のもと用いるドッグフードということ理解しましょう。
「機能性ドッグフード」は「療法食」ではない
「○○に配慮」「○○の健康」などと書かれたドッグフードを「機能性ドッグフード」といいます。なんとなく「療法食」と似ているため、代用できると思っている飼い主さんもいるかもしれませんが、機能性フードは病気の治療や予防を目的としたものではないため、代用できません。
機能性ドッグフードは、健康を維持していく上で、気になるポイントに応じて、栄養素などに配慮したものです。つまり、そのドッグフードによって病期の治療や食事療法を目的としたものではありません。むしろ与え方を間違えると、病気が進行してしまうこともあるので、機能性ドッグフードはあくまでも栄養面でのサポートとして考えるようにしてください。
「療法食」を食べてくれないときの対処法
愛犬が「療法食」を食べてくれないと悩んでいる飼い主さんも多いようです。ここでは、「療法食」を食べないときの対処法についてご紹介します。
切り替え方を工夫する
愛犬がドッグフードの違いに警戒したり、消化不良を起こしたりしないように、1週間程度かけて徐々に「療法食」の量を増やしていきましょう。とくにシニア期の腎臓病や心臓病の場合は、獣医師の指導のもと、ゆっくりと時間をかけて切り替えることが大切です。
4つのテクニックを試してみる
ゆっくり切り替えても食べない場合は、獣医師に許可を得て、以下のような方法を試して徐々に新しい食事に移行していきます。病気や使用する「療法食」にもよりますが、一般的には移行期間は少なくとも7日かけてください。中には食事の切り替えに抵抗を示し、3~4週間以上かかる場合もあります。それまでの食事と新しい食事を混ぜ、時間をかけて新しい食事の割合を増やしていく方法が一般的ですが、他の選択肢としては新旧両方の食事を隣りあわせの食器に入れて与えるという二皿給餌法もあります。
・温める
ドライフードでも電子レンジで温めることができます。電子レンジなどで40℃程度に温めてみましょう。風味が増して、食欲をそそることがあります。
・お湯で柔らかくする
お湯でふやかしてやわらかくすること食べやすくなることがあります。
・匂いだけを変えてみる
だしパックやお茶パック、茶葉をのぞいたティーバックなどにかつお節などを入れて、それをフードの袋に入れておくと、フードの成分を変えずに匂いだけを変えることができます。
・無理せず少しずつ
食欲が落ちているのなら、少しずつ回数を分けて与えるのでも問題ありません。ゆっくり食べさせてあげましょう。
器を変えて気分を変えてみるというのもひとつの方法です。また、飼い主さんが笑顔で「療法食」を与え、食べたらほめてあげる、ということも実は意外と大切なこと。愛犬は飼い主さんの笑顔、楽しそうな姿を見るのが大好きなのでうまくいくこともあるのではないでしょうか。
「療法食」が必要な場合は、獣医師に相談しながら愛犬に合ったフードや与え方を見つけてくださいね!
監修/徳本一義先生(有限会社ハーモニー代表取締役)