犬にはなぜ肉球があるのでしょうか? 今回は、犬の肉球の構造や役割などの基礎知識をご紹介します。犬が肉球をなめる原因や、起こりがちなトラブル、お手入れ法のほか、犬の足にまつわる豆知識もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
犬の肉球の構造とは
犬の肉球の構造
犬の肉球は、ほかの部位(皮膚)同様、表皮・真皮・皮下組織という3つの層からできていますが、表皮の一番上にある角質層は、ほかの部位に比べて分厚いという特徴があります。また、肉球の皮下組織には、脂肪や弾性線維(エラスチン)、膠原線維(コラーゲン)などのハリ・弾力成分が混在しているという特徴も。
犬の肉球が、表面はざらざらして硬く、押すと弾力があって柔らかいといった、独特な触り心地をしているのはこのためです。
犬の肉球の部位別の名前
犬の肉球の正式名は「蹠球(しょきゅう)」といい、部位ごとにも名前があります。
指球(しきゅう)/趾球(しきゅう)
前足についた4つの肉球を「指球」といい、後ろ足の場合は「趾球」と呼びます。
掌球(しょうきゅう)/足底球(そくていきゅう)
肉球の中心にある一番大きな肉球のこと。この部位も前足と後ろ足で名前が異なり、前足の場合は「掌球」、後ろ足の場合は「足底球」と呼びます。
手根球(しゅこんきゅう)
地面に接しない部位にある肉球で、人でいう手首部分にあるのが「手根球」です。これは進化の過程で使わなくなり、退化した肉球の痕跡器官といわれています。
なお、指球の先端から生える爪は表皮の一部が変化したもので、前足に5本、後ろ足に4本あるのが一般的です。また、人でいう親指部分にある「狼爪(ろうそう)」という爪は、地面に触れにくく伸びやすいという特徴があるため、こまめに切ってあげることが大切です。
犬の肉球の構造について知りたいかたは、下記の記事も参考にしてみてくださいね。
犬の肉球の役割とは
衝撃から足を守る
肉球は犬の体重を支え、犬が走ったりジャンプしたりする際に体にかかる衝撃を受け止める、クッションのような役割をもっています。
ブレーキをかける
肉球の表面のざらざらした部分は、犬が急ブレーキや急カーブをかけるときのグリップのような役割を担っています。また、肉球には汗腺があり、そこから汗を出して適度に肉球を湿らせることで、滑りにくくする役割も果たしています。
地面の熱・冷気から足を守る
犬の肉球は角質層が分厚いため、地面からの熱や冷気を感じにくいとされています。また、犬の肉球内部は動脈と静脈が並走しており、冷たい地面に足をつけて静脈内の血液が冷えてしまっても、すぐそばを流れる動脈の血液に温められるようになっているため、足が冷えにくいという特徴が。
体温調節をする
犬は基本的に呼吸と舌を使うパンティングで体温調節を行いますが、肉球にある汗腺からもわずかながら体温調節を行うことができると考えられています。
犬の肉球の役割についてさらに詳しく知りたいかたは、下記の記事もチェックしてみてくださいね。
犬が肉球をなめる原因とは
犬はお手入れ(グルーミング)のために肉球をなめることがあります。また、退屈なときや食後、寝る前などに、習慣として肉球をなめる場合も。しかし、何度もしつこくなめたり、噛んだりしているときは注意が必要です。犬がしきりに肉球をなめているときは、以下のような原因が考えられます。
ストレスを感じている
犬はストレスを感じると、それを紛らわそうとして、肉球をなめることがあります。犬のストレスの原因はさまざまですが、長時間の留守番や散歩に行けない日が続く、構ってもらえないなどが例として挙げられるでしょう。この場合、ストレスの原因を探ってうまく対処してあげることが大切です。
肉球にトラブルを抱えている
肉球に何らかのトラブルを抱えていると、犬は肉球をなめることがあります。もし肉球に傷や炎症などがある場合は、なめることでさらに症状が悪化するケースもあるので注意してください。
では、犬の肉球のトラブルには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。次章で詳しく見ていきましょう。
犬の肉球に起こりうるトラブル(ケガ・病気)とは
やけど
真夏の昼間にアスファルトの上や砂浜を歩いたり、人工芝の上で激しく遊んだりしていると、高温や摩擦熱などが原因で、肉球がやけどをしてしまうことがあります。軽症だと見た目の変化が少ないこともありますが、足裏の痛みで歩けなくなる症状で気づくこともあります。重症化すると肉球の色が黒ずんだり、真っ赤になったりするほか、肉球が膨れ上がったり、水ぶくれができたりするので注意しましょう。
乾燥・ひび割れ
乾燥によって肉球がカサカサすると、ひび割れを起こしてしまうことがあります。また、甲状腺疾患などが原因で肉球がひび割れを起こすこともあるので、気になる場合はかかりつけ医に相談することが大切です。
指間炎(しかんえん)
指間炎とは、指と指の間に炎症を起こす皮膚病のこと。指間炎になると犬は痛みやかゆみを感じるため、肉球をなめたり噛んだりすることがあります。日常生活のなかで皮膚トラブルとして発症することもありますが、川や海など、水気の多い場所で遊んだ後などに発症することもあります。
ケガ(出血)
走っている最中に急ブレーキや急カーブをかけて肉球を擦りむいたり、散歩中に落ちていたガラスの破片を踏んで出血したりするなど、日常のなかで犬が肉球にケガをするシーンは少なくありません。日ごろ室内中心に過ごしている犬がドッグランなどで急に思い切り走ったりすると、厚い角質がめくれてしまうこともあります。肉球に傷などができると、そこから菌が入りやすくなるため要注意です。
足のケガや対処法については、以下の記事もご覧ください。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー
アトピー性皮膚炎など、アレルギー体質の犬の場合は、指や肉球の間に炎症を起こすことがあります。犬のアトピー性皮膚炎について詳しく知りたいかたは、以下の記事を参考にしてみてください。
角質化
肉球はお手入れ不足などによって角質化すると、石のように硬くなる「角化症」になってしまうことがあります。悪化するとあかぎれを起こして、出血を伴うこともあるので注意しましょう。
犬は肉球に上記のようなトラブルを抱えると、なめたり噛んだりするほか、痛みなどから足を地面につけるのを避けるようにかばって歩いたり、歩くのを嫌がったりすることがあります。愛犬の肉球の異変に気づいたら、なるべく早めに動物病院を受診するようにしてください。
犬の肉球ケアのポイント
肉球のトラブルを予防するためには、正しくお手入れしてあげることが重要です。愛犬の肉球をお手入れするときは、以下のポイントをおさえておくといいでしょう。
散歩後は基本的に拭くだけでOK
肉球の清潔を保つことはもちろん大切ですが、洗いすぎは必要なうるおいまで取り除いてしまうため、乾燥や皮膚病などを引き起こす原因になります。基本的に、散歩後はぬれタオルやウエットシートなどを使い、やさしく拭くだけで十分です。足まわりの汚れがひどい場合には、犬の足を水洗いしてタオルで拭き、指の間もしっかりと乾かすようにしてください。
乾燥が気になるときはクリームを塗る
愛犬の肉球の乾燥が気になる場合は、クリームを塗って保湿してあげましょう。その際、必ず犬用のものを使用することが大切です。人用のクリームには、香料や着色料が含まれていることが多く、犬がなめると危険な成分が含まれている場合も。また、犬の皮膚はとても敏感なので、人用のクリームでは刺激が強すぎる心配もあります。
なお、クリームの塗りすぎは、雑菌が繁殖しやすくなるので要注意。趾間膿皮症(しかんのうひしょう)などの原因になる場合があるので、ベタベタしない程度に塗ることを心がけましょう。
肉球の間の毛はバリカンなどでカットする
肉球の間の毛が伸びると、そこに汚れや雑菌がたまりやすく、皮膚病などのトラブルの原因に。また、滑りやすくなるため、捻挫や脱臼、骨折などの大ケガを引き起こすおそれもあります。肉球にかかった毛はバリカンなどでカットし、清潔に保ちましょう。
肉球のお手入れ法については、以下の記事もあわせて参考にしてみてください。
犬の肉球の気になるQ&A
ここからは、犬の肉球に関して気になることポイントをQ&A形式で解説します。愛犬の肉球にまつわるお悩みや疑問解決の参考にしてみてくださいね。
Q:肉球のひび割れやカサカサとした状態のケア方法は?
肉球のひび割れの大きな原因は、乾燥です。肉球が乾燥してカサカサの状態で走ったり跳びおりたりしたときに、割れて出血してしまうこともあります。
先述した犬用の保湿クリームなどを使ってケアをすることもできますが、肉球は地面に接する部分でばい菌が入りやすいため、炎症や化膿を起こす前に動物病院で診てもらうのがおすすめです。
以下の記事では、肉球の乾燥対策やケア方法についてさらに詳しく紹介しています。
Q:肉球がザラザラと硬くなっているけど大丈夫?
肉球が硬化している場合は、お手入れ不足や老化などによる角質化のほか、肉球以外の病気のおそれもあります。たとえば、皮膚が炎症をくり返しゴワゴワと分厚くなってしまうアトピー性皮膚炎や、肉球が石のように固くなるジステンパー感染症など。
これらの病気は、ほかのさまざまな症状とあわせて総合的に診断されるので、気になる症状があればかかりつけ医に相談してみましょう。
アトピー性皮膚炎やジステンパー感染症についてさらに知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
Q:肉球が腫れたり赤いできものができたりしてしまったら?
肉球に腫れやできものを生じる病気としては、肉球の傷やなめすぎから起こる「皮膚炎」、指や肉球の間にしこりや腫れができる「腫瘍」などが考えられます。
これらの症状があると、そこが気になってなめすぎて皮膚を削り取ってしまったり、口内の雑菌でかえって症状が悪化してしまったりするおそれも。ひどくなると歩行が困難になることもあるので、早めに獣医師に診てもらうようにしましょう。
以下のQ&Aでは、肉球イボが見つかった場合の対処法も紹介しています。
Q:肉球がイソギンチャクのようになる原因は?
肉球のつぶつぶが伸びてまるでイソギンチャクのように見える原因は、肉球の皮膚の一番外側である角質層が分厚くなる「角化亢進」という状態にあると考えられます。
高齢の犬に見られやすい状態で、基本的に健康に害はありません。歩き方に影響が出る場合は、保湿したり短くカットしたりすることもありますが、出血が起こるおそれがあるので、動物病院で処置を受けるようにしましょう。
肉球の角化亢進については、以下の記事も参考になります。
【番外編】犬の足の種類にまつわる豆知識
それでは最後に、犬の足の形にまつわる豆知識をご紹介します。犬の足の形にはいくつか種類があり、犬種によってそれぞれ違った足の形をしているのをご存じでしょうか?
犬の足の種類1「水かき足」
指球の間にアヒルの足のような水かきの膜がある足の形を、「水かき足」といいます。ラブラドール・レトリーバー、ニューファンドランド、スパニッシュ・ウォーター・ドッグ、バルビー、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバーなどの犬種が、このタイプの足をもつとされています。
犬の足の種類2「猫足」
「猫足」とは、爪の先から肉球までの距離が短い足の形のことで、猫の足の形に似ていることから、この名前がつきました。秋田、ジャイアント・シュナウザー、クーバース、ドーベルマンなどの犬種が、この形の足をもつとされています。
犬の足の種類3「うさぎ足」
「うさぎ足」は、4つある指球のうち、真ん中2つがうさぎの足のように長くなっているのが特徴です。ボルゾイ、グレーハウンド、ベドリントン・テリア、ウィペット、サモエドなどの犬種が、この足の形をしているとされています。
犬の肉球は正しくお手入れすることが大切
今回は犬の肉球の構造や役割、注意したいトラブルなどについてご紹介しました。愛犬が元気に走り回ることができるのは、健康な肉球をしているからこそ。正しいお手入れやこまめなチェックで、愛犬の肉球の健康を守ってあげましょう。
参考/「いぬのきもち」2021年2月号『ぷにぷにの形、役割、お手入れ方法など 意外と知らない 肉球の話』
監修/滝田雄磨先生(SHIBUYAフレンズ動物病院院長)
文/ハセベサチコ
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
「いぬのきもちSTORE」が選ぶ オススメ商品ランキング
最後に「いぬのきもちSTORE」が選んだオススメ商品をランキング形式でご紹介します。
ぜひ今後の商品選びの参考にしてみてくださいね。
おすすめ肉球ケアグッズ<TOP3>1位 |  | スポットバリア 十分な保湿ケアができない時にワンちゃんを乾燥から守るため、獣医師により開発された犬用保湿乳液です
カルボマーによりゼリー状から液体に変化しますので、いつでも、全身どこでも、べたつくことなく…>詳しくはコチラ |
---|
2位 |  | パウケアクリーム ダメージを受けた肉球の保護に!
ダメージを受けた肉球の皮膚を潤し、保護するクリームです。人間よりも皮膚の弱い愛犬・愛猫の皮膚と足裏を…>詳しくはコチラ |
---|
3位 |  | ジッパー2 バリカン 切れ味と使いやすさを追及した一品
コンパクト、軽量、静音。 部分カット用として、足周り、お腹、顔等、きめ細かなカットに…>詳しくはコチラ |
---|