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獣医師監修|犬の血尿の原因 症例写真つきで解説 オス・メスで異なる要因も
犬も人と同じように、血尿になることがあるので注意が必要です。今回は、犬の血尿の症例写真や、考えられる原因(オス・メス別の病気など)について解説します。病気以外で血尿が出るケースや、危険度の高い血尿の特徴も解説するので、参考にしてください。
この記事の監修

石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
症例写真でチェック!犬の血尿とは?

犬の血尿とは、文字通りおしっこに血液が混じることです。しかし、血液の量によって、おしっこの色は異なるため、出血量が少ない場合は、血尿だとすぐに気が付かないケースも少なくありません。なお、犬の血尿は主に以下のような色をしています。
ところどころ赤い血尿

出血量が少ないときの血尿。おしっこ全体が赤く染まるのではなく、赤い血が点々と混ざっているのが特徴です。
全体的にピンク色をした血尿

おしっこ全体が血液で染まっている状態です。出血量によってはオレンジ色に見えることも。また、血液以外の色素によって、尿の色が著しく変化することもあります。
全体的に赤い血尿

ピンク色の血尿よりも、出血量が多いときに出る血尿です。かなり危険な尿と考えていいでしょう。
血の塊が混じるケースも
膀胱の中で血が固まると、血の塊となっておしっこと一緒に排泄されることがあります。また、避妊手術をしていないメスの発情期間(生理・ヒート)の出血でも、レバーのような細かい塊が出ることも。
ちなみに、青や炭入りのトイレシーツを使っていたり、尿の量が少なかったりすると、血尿かどうかわかりにくい場合もあります。その場合は、排泄直後のトイレシーツにティッシュペーパーを押し当ててみると、色がわかりやすくなりますよ。
犬の血尿の原因として考えられる病気(オス・メス共通)

膀胱炎
膀胱炎は、膀胱に炎症を起こす病気の総称です。膀胱炎になると血尿以外にも、濃い黄色のおしっこが出る、トイレの回数が増える、膀胱に痛みを感じるなどの症状が出ることがあります。
原因は細菌感染によるものが多く、そのほか、結石や腫瘍、外傷などが関係することも。尿道の短いメス犬や、ストレスを感じやすい犬がかかりやすい傾向にあるので注意しましょう。
膀胱腫瘍
膀胱腫瘍は血尿や頻尿などの症状を引き起こす、悪性または良性の腫瘍です。犬の膀胱腫瘍の多くは「移行上皮癌(いこうじょうひがん)」とよばれる悪性腫瘍で、老犬やメスのほか、シェットランド・シープドッグやビーグルなどに多く見られるといわれています。
尿道炎
尿道炎になると、排尿時の痛みのほか、1回のおしっこの量が減って頻度が増えるといった症状が見られます。細菌の侵入が主な原因ですが、結石や腫瘍が原因となることも。尿道が短い小型犬やメスは細菌が侵入しやすいため、尿道炎にかかりやすいと考えられています。
尿石症
尿石症は、泌尿器に結晶や結石ができる病気の総称です。結石ができる部位によって症状は異なりますが、尿道炎と同様、排尿時に痛みが出たり、1回のおしっこの量が減って頻度が増えたりすることが多いです。ヨークシャー・テリアやパグ、ミニチュア・シュナウザーなどの犬種がかかりやすいので注意しましょう。
バベシア症
バベシア症はマダニによって媒介される感染症で、バベシアという原虫に感染することで溶血性貧血を起こす病気です。この病気に感染すると、脾臓(ひぞう)の腫大や貧血、発熱、黄疸とともに、尿がオレンジ色や赤、褐色になる「血色素尿」を起こす症状が見られます。
なお、血色素尿とは、血液内の赤血球の色素が何らかの原因によって処理されず、そのまま腎臓から排出されたおしっこのこと。おしっこの色がオレンジ色や赤色になるので、血尿のように見えますが、この場合は血が混ざっているわけではないので、厳密には血尿ではありません。
犬の血尿の原因として考えられるオス特有の病気

前立腺炎
前立腺炎は、尿道に侵入した細菌に前立腺が感染し、炎症を起こす病気です。急性と慢性の2種類があり、慢性の場合は症状が出にくいことも。
5才以上の未去勢のオスがかかりやすい病気とされ、血尿のほかにも、排尿の回数が増えたり減ったりする、排尿時に痛がる、排尿姿勢をとる時間が長くなるなどの症状が見られます。
前立腺腫瘍
犬の前立腺腫瘍は悪性であることが多く、発症すると血尿や血便、しぶり、食欲減退、元気消失などの症状が見られることがあります。10才以上の老犬がかかりやすく、シェットランド・シープドッグやドーベルマンなどの犬種も注意が必要です。
犬の血尿の原因として考えられるメス特有の病気

子宮蓄膿(ちくのう)症
子宮蓄膿症は子宮に細菌が入り込み、子宮内に膿がたまってしまう病気で、避妊手術を行っていない老犬に多く見られます。
生理でもないのに、陰部からポタポタと出血したり、血の塊が混じった膿が出たりする場合は、この病気が疑われるのですぐに動物病院を受診してください。子宮蓄膿症は命に関わることもあり、治療には緊急手術が必要となるケースも少なくありません。
生理(発情期・ヒート)の場合も
避妊手術をしていないメスは、生後6~10カ月頃に最初の生理(発情期・ヒート)を迎えます。そのため、初めて愛犬に生理が来たときは、血尿だと勘違いしてしまう飼い主さんもいるようです。
発情期には陰部が腫れるほか、食欲不振や落ち着きがなくなるなどの症状が見られることがありますが、病気ではないので基本的に治療は必要ありません。
犬の血尿は病気以外が原因の場合も

中毒
バベシア症と同様に、たまねぎなどのネギ系による中毒症状では、血尿のように見える血色素尿が出ることがあります。原因を探るためにも、早めに動物病院を受診してください。
ストレス
犬はストレスで血尿になることもあります。ストレスで血尿が出ている場合は、愛犬が重度のストレスを抱えていると考え、原因を取り除いてあげることが大切です。
なお、ペットホテルに預けるたびに血尿が出るなどの場合は、ストレスが原因で膀胱炎になっている疑いもあります。
こんな症状が見られたら要注意!危険な犬の血尿とは

一度でも血尿の症状が見られたら動物病院を受診するべきですが、血尿に加えて以下の症状が見られる場合は、命に関わる危険もあるのでとくに注意が必要です。
歯茎や舌が青白くなっている
犬の歯茎や舌が青白くなっていたら、重度の貧血を起こしていることが考えられます。たまねぎ中毒や免疫疾患などが原因で血色素尿が出ている可能性も。
ぐったりしている
膀胱腫瘍や前立腺腫瘍、子宮蓄膿症などの悪化により、体調が急激に悪くなると犬がぐったりとすることがあります。
おしっこの量がかなり少ない
トイレに行ってもおしっこが出ない、またはおしっこの量が極端に少ない場合は、尿道閉塞を起こしているかもしれません。完全に尿道が詰まると体内の老廃物や毒素が排出できないことにより、状態が急速に悪化し、命に関わることもあるので大変危険です。
熱中症と思われる症状で血尿が出ている
血尿に加えて、犬が熱中症と思われる症状が見られる場合は、熱中症が進行し、臓器がダメージを受けている状態と考えられます。「熱中症+血尿」は、命に関わる緊急事態ですので、一刻を争います。
その他注意したい症状
- フラフラしている
- 排尿時以外で血がポタポタと垂れている
- 食欲不振
- 嘔吐/下痢
- 血便
- 頻尿(何度もおしっこのポーズをしても少ししか出ない)
- 多飲多尿
- 尿がキラキラ光って見える
- 陰部を気にしている など
動物病院へ行く際の注意点・ポイント
愛犬に血尿の症状が見られて動物病院へ行くときは、以下のような点をメモしておくといいでしょう。
- 血尿が出た回数や期間
- 血尿の色
- ふだんの尿との違い(頻度や色、様子など)
- 避妊手術をしていないメスは前回のヒートの時期 など
また可能であれば採尿し、難しい場合はスマートフォンのカメラなどで、血尿の写真を撮っておくのもいいでしょう。
一度でも愛犬に⾎尿の症状が見られたら早めの受診を

ちなみに、飼い主さんの目で血尿を確認できたのが一度だけであっても、実は肉眼では見つけにくい少量の出血が続いていることもあります。
愛犬に元気があるのなら緊急性は低いかもしれませんが、一度でも血尿の症状が見られたときは放置せず、必ず獣医師に診てもらうことが大切です。
なお、血尿の原因となる病気のなかには、治療に長くかかるものもあります。愛犬との暮らしのために、ペット保険への加入を検討してみてもいいでしょう。
参考・写真/「いぬのきもち」2017年5月号『健康?病気?4つのポイントですぐわかる!愛犬のオシッコチェック やってみよう』
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/ハセベサチコ
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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