「初心者だけど大型犬を飼ってみたい」「大型犬と室内で暮らすのが夢」というかたは、できるだけ“飼いやすい大型犬”を選ぶといいでしょう。今回は、初心者向きの大型犬種や飼い主さんの体験談、大型犬を飼う条件や心構え、注意点などについてご紹介します。
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憧れの大型犬と暮らそう
大型犬は飼うのが大変と思われがちですが、比較的性格が穏やかで、一般的に飼いやすいといわれる犬種を選べば、初心者でも楽しい時間を過ごすことができるでしょう。しかし、「かわいいから」などという理由だけで、大型犬を飼うことは絶対におすすめしません。
大型犬は体が大きくパワーがある分、1日に必要とされる運動量が多いです。運動不足は犬のストレスになるのはもちろん、問題行動や病気の引き金になることもあるので、飼う場合は運動時間をきちんと確保する必要があります。また、小型犬に比べると食費や医療費といった飼育費用も多くかかるため、経済面での余裕も必要不可欠です。
人も犬も不幸にならないためにも、大型犬を飼う場合は注意点などをよく理解しておくようにしましょう。なお、大型犬を飼う費用の目安については、下記の記事を参考にしてみてください。
大型犬の犬種別に飼いやすさを見てみよう
ここからは、室内で飼いやすいおすすめの大型犬(※)や、初心者には難易度が高いものの人気の大型犬を、飼い主さんに聞いた「飼いやすさ」に関するアンケート結果とともにご紹介します。それぞれの犬種の詳しい情報については、解説下の関連記事にてご紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
※「犬との暮らし大辞典」(ベネッセコーポレーション)内の特集「どのタイプが合う?わたしにピッタリな犬種43」に掲載されている大型犬のうち、「初心者向き度」の高い犬種を抜粋
※アンケートは2019年10月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査『大型犬に関するアンケートvol.93』より(回答者数 292人)
室内で飼いやすいおすすめの大型犬
ゴールデン・レトリーバー
ゴールデン・レトリーバーは穏やかな性格といわれ、室内で飼いやすいおすすめの大型犬ランキング第1位の人気犬種です。美しい金色の毛並が印象的で、盲導犬としても活躍しています。
ゴールデン・レトリーバーの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
「やさしい」「おとなしい」「人懐っこい」など、性格の穏やかさゆえ、飼いやすいと回答した飼い主さんが多くいました。なかには「家の中にいて困ったことがない」「従順なのでしつけがしやすい」という回答も。その一方で、「散歩のしつけをちゃんとしないと、グイグイ引っ張られて大変」という声も聞かれました。
ラブラドール・レトリーバー
ラブラドール・レトリーバーは、非常に頭がよく賢い犬種とされ、警察犬や盲導犬としても活躍しています。狩猟犬として獲物を回収(レトリーブ)する作業を行っていたことから、ものをくわえて持ってくることが大好きな犬種です。
ラブラドール・レトリーバーの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼いやすい理由としてもっとも多かったのが、「頭がいい」という回答です。また、「おとなしい」「誰とでも仲よくなる」という声も多数聞かれました。しかしなかには、力の強さなどから「女性や子どもだけで散歩に行くのは難しい」という声も。
バーニーズ・マウンテン・ドッグ
特徴的な毛色とやさしい顔つきをした、バーニーズ・マウンテンドッグ。どっしりと存在感のある大きな体をしていますが、性格は穏やかとされているので、大型犬の中でも比較的飼いやすいでしょう。
バーニーズ・マウンテンドッグの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
「優しい」「穏やか」「しつけを覚えやすい」などの理由から、飼いやすいと回答した飼い主さん多数いました。しかしなかには、「イタズラがすごい」「大きくて力が強い」という意見も。
シベリアン・ハスキー
※シベリアン・ハスキーは中型犬ですが、大型犬を飼うときに検討されやすい犬種のため、ご紹介しています。
シベリアン・ハスキーは、俊敏な動きとタフさをもち合わせたアクティブな犬種です。性格は友好的ですが、イタズラ好きな一面も。
シベリアン・ハスキーの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼いやすい理由としては、「賢い」「人の気持ちがわかる」という意見が。しかし、「散歩が引っ張られる」「力も強く、特性を知ったうえで根気よく付き合っていく必要のある犬種だと感じた」という意見も聞かれました。
フラットコーテッド・レトリーバー
フラットコーテッド・レトリーバーは、聞き分けがよく、手のかからない大型犬といわれています。ラブラドール・レトリーバー同様、回収(レトリーブ)作業に優れているので、一緒におもちゃで遊ぶと喜ぶでしょう。
フラットコーテッド・レトリーバーの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼い主さんからは、「性格が穏やか」「人なつっこい」「子どもにも優しい」「しつけを覚えやすい」という声が。回答者数がほかの犬種に比べて少ないものの、「飼いにくい」と回答したかたはいませんでした。
人気だけど実は初心者には難易度が高い犬
秋田
秋田は知的で温和な性格で、飼い主さんに従順とされています。しかし、警戒心と自立心が強いため、飼い主さん以外の人には警戒心をむき出しにすることも。また、とても我慢強い一面があるので、飼う場合は表情やしぐさなどから、気持ちを汲み取ってあげる必要があります。
秋田の飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼いやすい理由として、「おとなしい」「賢い」という回答が多数よせられました。なかには、「毎日プロレスをしていたけど、手加減を知っていた」という回答も。ただし、警戒心が強い犬なので、「来客や散歩中に会う人に吠えてしまう」という悩みを抱えているかたもいるようです。
初心者には難易度が高いけどこんな大型犬も!
ドーベルマン
ドーベルマンは運動好きで賢い性格といわれ、知的好奇心を満たす運動や遊びを好む傾向があります。警戒心が強く、番犬や警備犬、警察犬としても活躍する犬種なので、知らない人の怪しい動きに攻撃的になることも。
ドーベルマンの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼いやすいと答えたかたからは、「教えたことは一回で覚えた」「基本的なしつけさえしっかりできれば、飼い主の指示を的確にとらえてくれる」などの声が。一方、「散歩が大変」という理由から、飼いにくいと回答したかもいました。
グレート・ピレニーズ
グレート・ピレニーズは、フランスのピレネー山脈地方で城館や牧場を守っていた番犬です。落ち着いた性格ですが、独立心が強い犬も一面も。成長すると成人女性ほどの体重になるため、体力に自信があることが飼育の絶対条件になるでしょう。
ダルメシアン
古代犬種を祖先にもち、猟犬を交配して誕生したのがダルメシアンです。明るく陽気な性格ですが、警戒心が強く、飼い主さん以外の人や犬には、気を許さないところもあります。非常に活発なので、飼う場合はかなりの運動量が必要です。
ダルメシアンの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
飼いやすいと答えたかたからは、「優しくて人なつっこい」「トイレのしつけが完璧」という意見が聞かれました。一方、飼いにくいと感じたからは、「あまり懐かなかった」という意見が。
ジャーマン・シェパード・ドッグ
ジャーマン・シェパード・ドッグは、牧羊犬として生まれ、盲導犬や警察犬、警護犬として活躍する犬種です。落ち着いた性格なので、仕事を与えられると才能を発揮しますが、とてもパワフルなので飼う場合は精神力と体力が必要でしょう。
ジャーマン・シェパード・ドッグの飼い主さんに聞いた、「愛犬は飼いやすい?」
「頭がよい」「子どもの言うこともきちんと聞いて、いざとなれば守ってくれる」など、頭のよさから飼いやすいと感じているかたが多いようです。この犬種も回答者数が少ないものの、飼いにくいと回答したかたはいませんでした。
大型犬と暮らすには室内環境を整えよう
家に迎える犬種を決めたら、大型犬を室内で飼うために室内環境を整えましょう。
大型犬OKの家で飼う
アパートやマンションで大型犬と暮らす場合は、必ず動物の飼育条件について確認しましょう。犬を飼育できる物件でも、「大型犬はNG」というケースも少なくありません。
また、何かあったときに大型犬を抱っこして移動するのは大変なので、エレベーターが設置されている物件か、すぐ屋外に出ることができる物件がおすすめです。
トイレを設置する
留守番などの際におしっこを我慢してしまうことがあるので、できれば室内にトイレを設置し、室内でもトイレができるようにトイレトレーニングを行うようにしましょう。犬用トイレの設置場所は、犬がいつでも自由に排泄できる場所がおすすめ。トイレトレーニングのやり方については、下記も参考にしてみてください。
関節に負担をかけない工夫をする
体重の重たい大型犬は関節に負担がかかりやすいので、床材のフローリングに滑りにくい加工をしたり、適度にクッション性があるマットをしいたりして、工夫をしましょう。なお、爪の引っ掛かりやすいカーペットは危ないので、タイルマットやコルクマットがおすすめです。
また、ソファやベッドなどから飛び降りるのも、足腰に負担をかけて危険なので、ステップやスロープをつけてあげるといいでしょう。
飼う前に準備しておきたいグッズについては、下記の記事を参考にしてみてください。
大型犬を飼う心構えと注意点
大型犬を飼う場合、「犬の命に責任をもつ」という絶対条件のほかに、以下のような心構えが必要となります。
大型犬を飼う心構え
- 大型犬を室内で飼える環境が整っている
- 食費や医療費など飼育費用の用意がある
- 運動量が多いのでしっかりとお散歩させる覚悟がある
- トイレトレーニングや基本的なしつけを行う覚悟がある
- うんちやおしっこも小型犬より量が多いと認識している
- 換毛期は室内が毛だらけになることがあると認識している
- 室内に大きなケージやベッド、トイレトレーを置く必要があると認識している
- 小型犬より寿命が短い傾向があることを理解している
- シニア犬になったときの介護が小型犬より大変であると理解している
- 犬のために多くの時間を使うことができる など
大型犬を飼う注意点
しつけをきちんと行う
大型犬は体が大きく、パワーもあります。散歩時の引っ張りグセがついてしまえば、飼い主さんが転倒して転んだり、ほかの人にケガをさせたりすることも。また、吠えれば大きな声が出て、ご近所迷惑になるとこも考えられますので、子犬の頃から徹底的にしつけを行うことが大切です。
太らせないようにする
肥満はさまざまな体の不調の原因です。十分な運動と徹底した食事管理で肥満を防ぎましょう。犬の食事管理のやり方については、下記の記事を参考にしてください。
関節に負担をかけない工夫をする
先述のとおり、大型犬は関節に負担がかかりやすいです。肥満や運動不足などが、後の関節の疾患につながるおそれがあるので注意しましょう。
大型犬を飼うなかで困ったときは、プロに相談することが大切
初めて大型犬を飼うときはわからないことも多く、戸惑うこともあるかもしれませんが、きちんとしつけを行い、十分なコミュニケーションを取っていれば、よきパートナーとなってくれることでしょう。
なお、大型犬を飼うなかで何か問題が出てきたときは、無理に一人で解決しようとはせず、獣医師やドッグトレーナーなどに相談するのがおすすめ。ひとつひとつ問題を正しく解決することで、その後の「飼いやすさ」につながりますよ。
参考/「いぬのきもち」特別編集『犬との暮らし大辞典』
監修/いぬのきもち獣医師相談室
文/こさきはな
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。