犬と暮らす
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【専門家監修】犬のしつけ いつ何から始める?うまくいかない場合は
子犬を家に迎えたとき、まず何を教えたらいいのでしょうか。そんな疑問を解決すべく、月齢に応じたしつけの内容から基礎となるトイレ・ハウス・散歩のしつけ法、しつけの成功の鍵、飼い主さんを悩ませる噛みグセ・吠えグセを改善する方法まで紹介します。
石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
犬にしつけは必要? いつから始めるべき?
犬にしつけが必要な理由
また、犬が人間社会に受け入れられるようにするためにも、しつけは必要です。犬が問題行動を起こして他人に迷惑をかけてしまうと、飼い主さんの意識の低さだけでなく、犬に対する不信感もあおってしまいかねません。犬を肯定的に受け入れてもらうためにも、他人に迷惑をかけないようにしつけることが大切なのです。
しつけを始める時期
月齢 | 犬の心の成長 | 開始したいしつけ |
---|---|---|
生まれてすぐ | 生後間もない子犬は、母犬によって保護されています。そのため、きょうだい犬とじゃれあったり、噛み付きあったりすることで、社会性の基礎を育んでいきます。 | (改正愛護法により、犬や猫の販売は8週齢以降となったこともあり、この時期の犬に関わる機会はあまりないでしょう。) |
生後2カ月 | 家に迎え入れて間もなくは、子犬が母犬と離れることによりストレスを抱えている可能性も。体調には十分に配慮して、次のような体験をさせてあげましょう。 | まずは、新しい生活に慣れさせることを考えましょう。
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生後3~4カ月 | この時期の子犬は好奇心が旺盛で、怖いもの知らずのため、いろんなことに挑戦してくれます。そしていいことが起こると、学習して同じ行動を繰り返すように。この頃に、トイレ・ハウス・食事など基本的な生活のしつけと社会化に役立つ体験をさせておきたいです。 |
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生後5~6カ月 | この時期になると、子犬にも怖いものや好き嫌いが出てきます。怖いものや嫌がるものを無理強いすると苦手意識が強くなるだけでなく、飼い主さんに対する信頼も薄くなっていくので、犬の気持ちを理解しながらコントロールしていくことが大切です。 |
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生後7~8カ月 | この頃になると、子犬もさまざまな経験をして、社会の見方や社会に対する考え方の土台ができてきます。ただ精神的な成熟には、もう1年程度かかるので、落ち着きが出てくる2才頃までは根気よくしつけていきましょう。 |
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「いぬのきもち」特別編集『子いぬと仲良くなる育て方 しつけ編』より作成 |
しつけのために! 子犬のうちから慣れさせておきたいこと
子犬の生活リズムに合わせてしつける
人や音、景色など外部刺激に少しずつ慣らしていく
抱っこしながら家の周辺を短時間歩いてみたり、来客者からおやつをもらったり、外に出ることや家族以外の人と触れ合うことに徐々に慣らしていきましょう。怖がっているのに、無理に刺激に触れさせてしまうと逆効果になるおそれがあるので、子犬の様子を見ながら行ってくださいね。
体に触れても嫌がらないようにする
とはいえ、爪切りや歯磨きなどのケアは、愛犬の健康を保つためにも必要不可欠。おやつを使って気をそらしながら体に触れ、スキンシップをとるときに爪切りで体を触るなど、少しずつ体に触れることに慣らしていきましょう。
必要な「トイレ」のしつけ
トイレトレーニングの手順
1. トイレの時間になったらクレートから出す
生活リズムをチェックし、トイレの時間をメモしながら、時間になったらクレートから愛犬を出しましょう。子犬がトイレを我慢できる目安は、「月齢+1時間」なので、我慢できる限界も参考にしてください。
2. トイレへ誘導する
おやつやおもちゃなど愛犬が好きな物を使って、トイレまで誘導します。ここで排泄しなければクレートに戻し、30分後に再チャレンジを。その際、「ワンツー、ワンツー」などの決まった言葉をかけると、愛犬が排泄の成功体験を思い出して排泄しやすくなるでしょう。
3. 排泄したらほめてごほうびをあげる
上手く排泄できたごほうびとしておやつやフードを与えると、愛犬が「ここで排泄をするといいことがある!」と覚えてくれます。これを続けるうちに、トイレに誘導するための言葉(2を参照)をかけるだけで自然と排泄を促すことができるようになるでしょう。
トイレを失敗してしまったときの対処法
トイレに失敗しても、叩いたり怒ったりしてはダメ
ニオイが残らないよう、すぐに掃除
必要な「ハウス」のしつけ
ハウスは、クレートでもケージでも大丈夫
ハウス・トレーニングの手順
ハウスが安心して休める場所であることを実感してもらうため、愛犬のお気に入りの敷物やフードを置いて、ハウスを好きなもので満たしてあげましょう。そして、愛犬をフードやおもちゃで誘導し、ハウスの中に入ったらおやつを与えましょう。
2. ハウスに自分から入るように誘導する
ハウスに入ることに抵抗がなくなったら、今度は飼い主さんが「ハウス」の掛け声をかけて、フードやおもちゃでハウスの中に誘導します。お尻までハウスに入れたら、フードやおもちゃを持つ手を手前に引いて、犬にドアのほうを向かせます。
すぐに出てこず、中で落ち着けるようになったら、おやつなどを与えて愛犬を褒め、徐々にハウスの中の滞在時間を延ばしていきましょう。
3. ドアを閉めて、暗くする
ハウスの中に5分くらいとどまっていられるようになったら、ハウスの扉を閉めてみます。最初はすぐに開けますが、ドアの隙間からフードを与えながら、徐々に閉める時間を長くしていきましょう。
ドアを閉められるのに慣れたら、布をかけ、暗くして過ごす練習も。犬がおとなしくしていたら、布の隙間からフードのごほうびをあげましょう。
4. ハウスの出方を教える
思わぬ事故を防ぐためにも、犬にハウスから飛び出してはいけないことを教えなければなりません。もし愛犬がハウスから飛び出そうとしたら、もう一度ドアを閉め、落ち着くのを待ってからリードをつけて外へ出すようにしましょう。外に出てからも、「マテ」や「オスワリ」をさせて、落ち着くことを覚えさせるとよいでしょう。
ハウスをお仕置き部屋にしてはダメ
必要な「散歩」のしつけ
まずは、室内で散歩に慣れさせる
愛犬がリードに慣れたら、リードを持って室内を歩きましょう。時折名前を呼び、振り向いたらおやつをあげるのを繰り返し、徐々に歩く距離を延ばしていきます。外では、周囲に気を取られて飼い主さんの指示を無視する危険性もあるので、名前を読んだら振り向き、方向転換してもちゃんとついてくるようになるまで、おやつを使って練習していきます。
準備が整ったら、外の散歩に慣れさせる
- 抱っこで外に出る
- 安全な場所で下ろす
- 下ろした場所でフードを与える
- 歩きながらフードを与える
外に慣れたら、今度は「オスワリ」「マテ」などの動作練習を外で行い、外でも飼い主さんの指示を聞けるようにしつけましょう。最終的にはアイコンタクトをしながら散歩できるまで、レベルアップをしていきたいです。
しつけを成功させる6つのポイント
褒めるトレーニングをする
誘導して、褒める
短いトレーニングを繰り返す
時間を減らして、回数を増やすのが◎
難しいこと、いろいろなことに挑戦させない
犬の個性を理解する
叱るのはNG
また、困った行動をした直後に、叱られて嫌なことが起こるのは効果がありそうにも見えますが、これは叱るタイミングが難しいです。もし、愛犬が怒られることで嫌な思いをすれば、飼い主さんへの信頼をなくし兼ねません。そうなると飼い主さんと愛犬の関係が悪くなり、しつけもうまくいかないでしょう。
問題行動になる前に予防する
飼い主さんの行動や暮らす環境を変えるだけで抑止できることも多いので、愛犬が困った行動をする前に、はじめから「させない」工夫を取り入れましょう。
しつけの疑問、悩みの解決法
噛み癖はどう直せばいいの?
【犬が甘噛みする理由】
- 歯ぐきがムズムズするから
- 捕食性のため、動くものを追いかけてしまうから
- 噛んだときに飼い主さんが反応して、楽しかったから
【犬が本気噛みする理由】
- 怖いものや嫌なものを追い払いたいから
- 人や犬、物を警戒しているから
- なにかがあって、攻撃したいから
噛みグセをつけないためのしつけ法
- 噛みたい欲求を満たしてあげるために、噛んでいいおもちゃなどを与え、噛んでいいものを教える
- 人を強く噛んできたときは犬がビックリするくらい大きな声で「痛い」と言い、犬だけを残して家族全員でその場から立ち去ることで、「噛むと楽しいことが終わってしまう」と教える
- 人に対して恐怖や不安を抱いていると噛んでしまうので、子犬の頃からスキンシップしたり、いろんな人と会ったりして、人に会うことをいいことと理解させる
家族のひとりでも甘噛みを許してしまうと、愛犬は噛むことを覚えてしまいます。家族全員で確認しあい、噛ませないことを徹底しましょう。
チャイム吠えする犬の対処法は?
また、チャイムが鳴ったときに「オイデ」を指示するようにすると、吠えることよりも飼い主さんを注目するように。最初は、インターホンの受話器付近におやつを置き、おやつで誘導してもいいでしょう。
「オイデ」の代わりに「ハウス」を指示して、クレートの中で待機させる方法も有効です。ハウスの中が安心できる場所になっていれば、犬も吠えないでしょう。
来客や人に吠えるのを止めさせるには?
犬に対する吠えをなくすには?
そして本格的に散歩に出かけるようになったら、ほかの犬に興奮しない訓練も必要です。散歩中にほかの犬と出会ったら、アイコンタクトや「オスワリ」を指示して、愛犬の注意を飼い主さんに引き寄せましょう。
しつけに必要な「マテ」の教え方
1. 待つとフードがもらえると教える
座った状態の犬にフードを与え、手を伸ばして再びフードを与えながら、愛犬に待てばフードがもらえることを教えていきます。
2. 「マテ」の指示をつける
「1」の動作で手を離して待たせるときに、「マテ」といいます。待てたらご褒美のフードをあげましょう。
3. 「OK」の合図で終わらせる
アイコンタクトを取りながら「OK」指示を出し、飼い主さんも動いて「マテ」を終わらせます。
愛犬が「マテ」の指示を覚えられると、洗濯物を干すときやごみ捨て、ダメな場所に飛び乗ろうとしたとき、散歩中の信号待ちなどで使えます。
しつけに必要な「フセ」の教え方
1. 「オスワリ」の姿勢に誘導する
「オスワリ」の指示を出しながら、フードを持った手を愛犬の頭の上に移動して座り姿勢に誘導します。
2. フードで愛犬の気を引きながら、「フセ」の姿勢に持っていく
座り姿勢のままフードを持った手を愛犬の口元に運び、フードをなめさせて気を引きます。フードをなめさせながら「フセ」と言って、ゆっくりと手を真下に下ろします。
4. 伏せた状態を作る
愛犬の胸が床について伏せた状態になったら、フードをあげながら、愛犬をほめてあげましょう。
この方法で「フセ」ができない場合は?
1.まずは飼い主さんが座る
飼い主さんが足を前に投げ出した状態で座り、その横に愛犬を座らせながらフードを与えます。
2.愛犬の頭を膝の下にくぐらせる
愛犬に近い方の膝を立て、「フセ」の合図をしながらフードを持った手を下ろして、愛犬の顔を膝の下に誘導します。
3.膝を元の位置に戻して褒める
愛犬が「フセ」の姿勢になれたら膝を戻し、フードを与えて褒めてあげましょう。
「フセ」を覚えさせると、来客が来たときや飼い主さんの食事中、カフェへ行ったときに愛犬を待機させることができます。
成犬になってからのしつけ方は? 室内トイレは教えられる?
成犬(シニア犬)からでもできるしつけは?
- 「オスワリ」「マテ」「アイコンタクト」などの指示
- しつこい要求吠え
- 飛びつきグセ
- 興奮グセ
- 引っ張りグセ
- チャイム吠え
- 拾い食い
- ハウスに入るしつけ
そのほかにも、トイレや噛みグセのしつけもできなくはないですが、子犬の時期よりもかなりの時間を要します。完全に直すのではなく回数を減らすようにする、その行動が出ないような環境設定をするなど、妥協をする必要があることも心に留めましょう。
室内トイレの習慣がない犬は直せるの?
「庭で排泄した」場合は散歩に行き、「しない」場合は家に戻ることを繰り返し、愛犬に庭で排泄することを覚えさせていきます。散歩中に排泄しそうになったときは、散歩を止めて家に戻る努力も必要でしょう。
それと並行して、玄関などの外に近い屋内にもトイレを設置し、室内での排泄も促したいです。そこで排泄に成功したら、トイレを徐々に室内へ移動させていきましょう。
プロに任せる手もある!
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/こさきはな
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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